戦車射撃競技会(3)

先週の、戦車射撃競技会に参加する隊員と支援に回る隊員について、もう少し補足させてください。
戦車の乗員として競技会に参加できる隊員の数は限られていることは先週お伝えしました。選抜方法は中隊長により異なりますが、即席のメンバーでベストな結果が出せる代物ではないため、単車のメンバーが固定されているという点はどの部隊も共通しています。
漏れた隊員はサポートに回り、休日を返上して警衛隊などの特別勤務をすべて引き受けます。
選抜された隊員は競技会だけに専念できる環境で、射場が自由に使える朝7時までに少しでも動きの復習をしようと、夜中から射場にやって来て根気強く順番を待ちます(どの部隊も考えていることは同じですから、朝までの射場は早い者勝ちです)。
こうしてそれぞれの隊員が役割を果たし競技会が終わると、まずはサポートしてくれた隊員から先に休暇を取ってもらうのが慣例となっています。ちょっといい話ですよね。
さて、競技会本番の前にはプレ射撃が行なわれます。どの部隊がプレ射撃を行うかはくじ引きで決めらます(競技会での射撃の順番もくじ引きです)。
射場にはプレ射撃を見るために、競技会に参加する隊員たちがどんどん集まってきます。日頃から標的に向かって射撃するという訓練は行なっていますが、師団の標的の出し方が自分達の訓練と同じとは限らないということで、多くの隊員がその確認のために双眼鏡を手にしています。これだけ多くのギャラリーがいるとプレ射撃する部隊にとっては重圧なのではと思いきや、実際は自分達の射撃以外のことを考える余裕などないのだとか。
プレ射撃は競技会の予行も兼ねているので、射撃後はドーザやグレーダが整地、散水車による散水も行なわれます。さらに射場から離れた資材置き場には、砂利を積み込むショベルカーや運搬するトラック、給油車など、さまざまな車両が出入りしています。競技会に参加する隊員のために、陰ではそれ以上の数の隊員が競技会を支えているのです。
今年の戦車射撃競技会はあいにく取材できなかったので、今回は去年の開催の様子をご紹介します。
小隊の射撃が見えやすい場所に立つプレハブは、防衛団体や自衛隊協力団体などの見学スペースとなっています。60名収容でき、暖房完備、ブランケットも用意。さらに双眼鏡とひとり1台のPCで、戦車の動きをあますところなく見られるようになっているなど至れり尽くせり。1日3回の入れ替わり制で、射場と北恵庭駐屯地間はマイクロバスによる送迎もあります。
競技会初日は、季節外れの超大型で日本各地に被害を及ぼした台風21号が寒気を引き込んだだめ、北恵庭駐屯地はみぞれ、競技会会場の射場はさらに冷え込み初雪となりました。
目に見えて雪が積もり始め、標的はまったく目視できません。雨や雪が降っていても標的さえ見えていれば射撃は実施できるのですがそれもかなわず、初日の競技会は中止となってしまいました(ただし予備日を設けていたため、競技会自体は予定通り全部隊の射撃を行なうことができました)。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成30年(西暦2018年)12月6日配信)