平成30年西日本豪雨災害派遣(4)

今回の災害派遣は3万人規模とあって、派遣された部隊は北海道から沖縄まで広範囲に及びました。豪雨の後は35度以上の猛暑日が容赦なく続く被災地に、自宅に冷房機器が必要ない北国に暮らす隊員もやって来たわけです。北海道の2個師団・2個旅団は今回すべて派遣されましたが、第7師団(東千歳)の災害派遣について師団司令部から話を聞くことができたので、以下Q&A式で詳細を紹介します。
Q 派遣期間
A 7月9日に第11普通科連隊第6中隊長を長とする給水支援隊を編成し、香川県善通寺駐屯地を目標に派遣しました。また、7月10日には第7後方支援連隊補給隊長を長とする入浴支援隊を編成し、広島県の海田市駐屯地を目標に派遣しました。
派遣される段階では、派遣期間は確定していません。あくまでも被害状況や自衛隊に対するニーズ、自衛隊に付与される任務及び地域の状況によるため、当初の段階で派遣期間を決めることはできません。
Q 派遣部隊
A 入浴支援隊については、野外入浴セットの設置・運営に必要な知識及び技術を有しているのは後方支援連隊の隷下部隊である補給隊のみのため、補給隊をもって編成しました。
給水支援隊については、入浴支援隊として第7後方支援連隊を派遣した関係から、師団全体の災害派遣に関わる編成の効率化・均等化のため、連隊規模の部隊から派遣部隊を選定しました。
Q 活動地域
A 入浴支援隊は北方入浴支援隊として中部方面隊に配属され、中部方面隊の命令・指示に基づき活動しました。給水支援隊は北方給水支援隊として第14旅団に配属され、第14旅団の命令・指示に基づき活動しました。
給水支援隊の活動地域は愛媛県西予市、宇和島市、大洲市、入浴支援隊の活動地域は広島県3原市北方コミュニケーションセンターです。
Q 現地までのアクセス
A 往路・復路ともに、北海道から本州への移動はフェリーを使用しました。
往路は7月10日23時40分小樽港(海上移動)~舞鶴港(陸上移動)~福地山駐屯地(中継地)~海田市駐屯地(中継地・入浴支援隊)/善通寺駐屯地(中継地・給水支援隊)~7月12日13時頃三原市北方コミュニティーセンター着(入浴支援隊)/7月11日午後愛媛県西予市等着(給水支援隊)。
復路は入浴支援隊が姫路駐屯地(中継地・入浴支援隊)/福知山駐屯地(中継地・給水支援隊)から~舞鶴港(海上移動)~小樽港というルートです。
Q 駐屯地~現地間のアクセスで民間の交通手段を利用する際の留意点
A 現地での活動を踏まえた場合、どうしても車両の運用は必須であり、かつ、北海道から本州への移動に海上移動は必要不可欠です。そこで民間フェリーを使用した移動が主体となりますが、一般の乗客の方々がいらっしゃる関係から、民間フェリーのチャーターはきわめて難しいものとなります。したがって、道外に派遣させる場合においては、小樽港や苫小牧港といった運用可能なすべての民間船舶を活用し、かつ、民間フェリーの空き状況に応じて派遣部隊を出航させるようにしています。今回、現地までは海上移動(フェリー)で約1日、それから中継駐屯地における燃料補給等の所要の準備を含め、陸路での移動に約半日を要しました。
Q 現地の第一印象
A 住宅や車が土砂により押し流され、生活環境が一変し、かつ、道路も荒廃した凄惨な状況を目の当たりにして「速やかに活動を開始して飲料水をお届けしなければならない」と感じました。(給水支援隊長)
広島県三原市は民家の3分の1ほどが浸水した形跡があり、自然の脅威に身の引き締まる思いと、われわれに与えられた任務の重さを改めて感じました。(入浴支援隊長)
次週に続きます。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成30年(西暦2018年)10月25日配信)