陸上自衛隊大改編(5)

渡邉陽子さんのデビュー作

オリンピックと自衛隊

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2020東京五輪も、自衛隊は同じ役割を求められることになる
知られざる自衛隊の苦難と栄光の歴史が、ここに明らかに!!
オリンピックに熱い思いを抱く、すべての人に捧げます。

自衛隊家族会発行「おやばと」、「隊友」160715号、 「月刊モデルグラフィックス」2016/8号「月刊丸」2016/8号160712「防人の道 NEXT」「歴史群像」8月号(学研)160701 桜林美佐の国防ニュース最前線、「月刊世界の艦船」2016/9号、160809 政治学者・岩田温の備忘録 で取り上げられました。





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陸上自衛隊大改編(5)

今春行なわれた陸自組織改編のお話、最終回です。
今回の改編は、今まで空白地帯であった南西防衛を強化するため意義あることには違いありません。
しかし、改編により生じるリスクがあるのも事実です。

 

たとえば人員不足。新しい部隊ができても自衛官の定員が増えるわけではないので、人手不足になる部隊が出てくることは避けられないでしょう。有事の際はもちろん、災害派遣においても交代部隊や要員を用意できなくなる懸念があります。

 

本州の機動打撃力にも不安があります。25大綱で戦車を300両、火砲を300門まで減らすとしたためです。
戦車と火砲はおのずと北海道と九州に集中し、戦車部隊や特科部隊が本州から消えます。それは作戦基本部隊の弱体化につながるうえ、演習等で諸職種をまとめた戦闘団が編成できないということです。
方面総監クラスになって初めて戦闘団を運用するという指揮官も、今後は登場する可能性があるというのは由々しき事態です。

 

新編された水陸機動団にも深刻な課題があります。その最たるものが「圧倒的な輸送力不足」です。
敵前上陸する専門部隊である米海兵隊の日本版という位置付けながら、米海兵隊が所有している空母と輸送艦の機能を持った強襲揚陸艦が、水陸機動団にはありません。米海兵隊が海上輸送に関して自己完結できるのに対し、水陸機動団は海自や空自の輸送力に頼るしか術がないのです。
AAV7は海自の「おおすみ」型輸送艦3隻を改修して対応しますが、最終的には52両保有することになっているAAV7は3隻では運びきれません。しかも輸送艦にAAV7が満載されたら、機動戦闘車や戦車、軽装甲機動車などを上陸させるために使うホバークラフト、LCACを積むことができなくなってしまいます。
防衛省は2015年から民間輸送船「ナッチャンWorld」と「はくおう」を20年間の契約で借り上げているものの、有事の際にこれらの輸送船を最前線へ向かわせるというのは可能なのでしょうか(前線には行かないという前提での契約になっているようですが…)。自衛隊発足以来ひたすらに国民の理解を得るために尽くしてきた組織が、何十年もかけて得た自衛隊への理解と高い評価を一気に突き落とすような作戦を取ることができるのでしょうか。山崎陸上幕僚長も「水陸機動のための輸送、また上陸についてはこれから整備していかなくてはいけないという認識は持っている」と会見で述べていることからも、現状の輸送力のままではせっかくの水陸機動団も、いざというときにその実力を発揮することは難しいでしょう。
なお、今年7月の産経新聞には「防衛省が陸上自衛隊に輸送艦を導入する方向で検討」という記事が載りましたが、それを追随する記事は見当たりません。ただ「政府が年末に決定する防衛計画の大綱に反映させたい考え」とまで書いているので、今後の展開には注目ですね。

 

オスプレイの配備計画も悩ましい問題です。オスプレイは水陸機動団を運ぶ主要輸送機として米国から17隻購入、佐賀空港への配備計画を進めていました。水陸機動団が所在する長崎県の相浦駐屯地とは約60km、有事の際も迅速な対応が可能な距離です。
ところが今年2月、陸自ヘリAH−64が佐賀県内の民家に墜落するという事故が起き、それでなくとも遅れていた地元調整がさらに難航することとなりました。そのため今秋納入される最初の5機は米軍のオスプレイ整備拠点がある千葉県の木更津駐屯地に暫定配備されることに。相浦駐屯地までの約1000kmという距離によって生じるロスは、水陸機動団の部隊展開に影響を及ぼすことは避けられません。
その後さらに進展があり、佐賀県が配備を容認したので晴れて当初の予定通り佐賀空港に配備……と順当にはいきません。県は容認しても地権者の地元漁協の同意は得られていないため、施設整備に着手できないのです。さらに暫定配備を検討している木更津駐屯地でも地元の同意が得られていないとして、今秋としていた米国から日本へのオスプレイ納入時期が12月下旬以降に延期される見通しとなってしまいました。

 

まだあります。
水陸機動団の運用に絶対不可欠な統合運用にも課題が残ります。島しょ奪還には護衛艦による艦砲射撃や戦闘機による航空攻撃が欠かせず、高度な連携が求められます。
ところが海上、空中、そして陸上という3次元の作戦が関わる複雑な水陸両用作戦を遂行できるほど、現在の自衛隊における統合運用が機能しているとは言いがたいのが現実です。
実はYS(ヤマサクラ)などの指揮所演習の際ですら、陸自の火力支援要請に海自や空自が応じるとは限らないそうです(実際に聞いた言い回しより控えめに表現しました)。
ハード面を整えてもソフト面の課題に対処できない限り、新しい部隊を発足させて装備を整えても、「日本版海兵隊」としての実力を発揮することは困難です。ただしこれらの課題はすべて掌握済みのため、今後どのように課題解決に向けて対応していくかが注目されます。

 

(おわり)

 

 

(わたなべ・ようこ)

 

 

 

 

(平成30年(西暦2018年)9月27日配信)

 





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