陸上自衛隊大改編(4)

今春行なわれた陸自組織改編のお話、第4回目です。
陸上総隊の新編と並んで今回の改革の目玉となっているのが、同じく新編された水陸機動団です。
約6800もの島からなる日本の防衛に水陸両用作戦能力は欠かせないものですが、これまでの自衛隊はその機能が十分に備わっているとは言えませんでした。そこで島しょへの侵攻に対して速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備するため、水陸機動団が新編されたのです。島しょ防衛の中核を担う、陸自が初めて保有する本格的な水陸両用作戦部隊です。
司令部は相浦駐屯地に所在、佐世保港内の崎辺地区の一部を分屯地として主要部隊の水陸両用車部隊を配備しました。分屯地の新施設は今年12月に完成予定となっています。
水陸機動団が担当する南西諸島は、鹿児島県の大隅諸島から沖縄県の与那国島までの全長約1200キロ。本州と同じ程度という広大なエリアでありながら、かつて与那国島が「駐在所の拳銃2丁で守られた島」と称されたように、長らく防衛の空白地帯となっていました。
水陸機動団は2個連隊の約2100名規模で発足、次期中期防以降から3個連隊、約3000名規模となる予定です。ちなみに第1水陸機動連隊は、西部方面普通科連隊を基幹として編成されました。
水陸両用車AAV7やオスプレイなど、陸自が新たに導入する装備品もすべてこの水陸機動団で使用するためのものです。
陸自はこれまで保有していなかった水陸両用作戦機能を整備するため、2017年3月に水陸機動教育隊を新設、配属される隊員の訓練やAAV7などを使った上陸作戦の研究にあたってきました。さらに海自、空自及び米軍などとの連携の向上を図るため、国内外の演習に積極的に参加してノウハウを蓄積。なかでも水陸機動団の中核を担うことになる西部方面隊普通科連隊は、米海兵隊との共同訓練を重ね、練度向上に努めてきました。
なお水陸機動団は米海兵隊をモデルにしたことから「日本版海兵隊」と称されることもありますが、米海兵隊は作戦に必要な各種機能をすべて保有している一方、水陸機動団は海自や空自との統合運用により作戦を遂行する点が大きく異なります。
また、オスプレイは配備予定の佐賀空港の地元調整が遅れ気味ということもあり、次期中期防までに空輸部隊新編が予定通り進むか微妙な状況になっていましたが、先月8月24日に佐賀県知事が受け入れを表明しました。ただし、配備計画地の地権者である漁業者が配備に反対しているため、今後は漁業者の同意を得られるかが焦点となります。
このほか、警戒監視能力等の強化としては、南西地域の平素からの部隊配置を推進すべく、与那国沿岸監視隊等を配置して監視態勢強化するとともに、島しょ部への兵站施設等の整備を促進します。
また、陸自における教育訓練研究機能を充実・強化するため、幹部学校(目黒)と研究本部(朝霞)を統合したシンクタンク的な「教育訓練研究本部」を目黒に新設しました。
さらに情報教育態勢の強化のため、富士駐屯地に情報学校を新編(語学教育等は小平駐屯地で実施)。戦闘職種と連携した教育を通じて、無人偵察機UAVなどの新しい装備品を含む情報収集、処理に対応できる人材を育成します。
(わたなべ・ようこ)
(平成30年(西暦2018年)9月20日配信)