陸上自衛隊大改編(3)

今春行なわれた陸自組織改編のお話、第3回目です。
第8師団と第14旅団は、高い機動力や警戒監視能力を備え、機動運用を基本とする「機動師団」「機動旅団」に改編されました(今後は約半数の師団・旅団が機動運用型へ改編される予定です)。
8師団の場合、第42普通科連隊を第42即応機動連隊に改編し、師団の先遣部隊として即応展開できるようにするとともに、重装備である第8特科連隊(北熊本)および第8戦車大隊(玖珠)を西部方面隊直轄に、即応予備自衛官を主体とする第24普通科連隊(えびの)を西部方面混成団に移管し、師団全体としてより一層即応性や機動性を高めました。
即応機動連隊とは、機動力と戦闘力を高めるため、普通科連隊を改編して諸職種(普通科・特科・機甲科・高射特科など)をひとつのパッケージにまとめた、これまでの陸自にはない新しい概念の部隊です。
今回の改編では8師団の第42普通科連隊と14旅団の第15普通科連隊(善通寺)が初の即応機動連隊となりました。
14旅団の場合、改編前の旅団は15連隊、14特科隊、14戦車中隊等で編成されていましたが、改編後は旅団隷下に第15即応機動連隊があり、連隊は3個普通科中隊、1個機動戦闘車隊、120ミリ重迫撃砲などを装備する一個火力支援中隊などで構成されます。
また、路外機動や火力の性能、防護力は戦車より劣るものの高速道路走行や民間フェリーに搭載可能な16式機動戦闘車隊(MCV)を導入、島しょ部などへの迅速かつ大規模展開能力を備えました。「もたつかない機動力」が重視されているわけです。
装輪の装甲車に戦車砲を搭載したMCVは高速道路を時速100キロで走行でき、軽量化により空自輸送機C-2による空輸も可能、離島などの遠隔地にも迅速に展開が可能です。車体の上に搭載された105ミリ砲は、74式戦車と砲弾を共有できます(74式戦車を扱っていた部隊が最新ハイテク車を運用することになりました)。さらに諸職種協同部隊になることで、普通科・特科・機甲科そろっての訓練がやりやすくなるというメリットもあります。今後は機動連隊として装甲化の整備が必要となっていくでしょう。
なお、MCVを運用する部隊は、今回の陸自大改編時には8師団と14旅団のみのため、双方が情報共有しつつ運用法を検討することになります。
MCVの導入により、本州の作戦基本部隊の戦車部隊はすべて廃止されることになります。
ちょっと話がずれますが、今年7月に第6師団の訓練検閲を取材してきました。第6師団は来年3月末に機動師団化されるため、大和駐屯地に所在する半世紀以上の歴史を持つ第6戦車大隊は廃止されることが決まっています。74式戦車が参加する最後の演習だったため、一目見たいと思って行ってきました。
また、今年8月に開催されは総合火力演習でも、ついに74式戦車は登場しませんでした。その代わりに登場したのがMCVとAAV7(水陸両用車)です(パンフレットにもどーんと掲載されていました)。
次回は水陸機動団などについてご紹介します。
(わたなべ・ようこ)
(平成30年(西暦2018年)9月13日配信)