第302保安警務中隊(2)

先週に続き陸上自衛隊第302保安警務中隊をご紹介します。
厳しい選考基準をクリアして晴れて隊員になってからも太らないよう常に気を遣うなど、健康管理も怠ってはいけません。体重のコントロールはモデル並みに切実で重要な問題です。
特別儀仗の直前だけ気をつけるのではなく、日頃から節制を心がけていなくてはならず、プライベートな時間でも儀仗隊員という立場を忘れることは決してないのです。
そして身だしなみにうるさい自衛隊の中でも、特別儀仗という任務を担うこの部隊は抜きんでて厳しくなっています。すごいですよ。
散髪は半月に一度では間に合わず、なんと10日に一度は切っている隊員がほとんど。しかも「周り2分、前髪5cm以内」という規則つき。
見た目が大変重要視される彼らには散髪券が支給されるそうですが、到底それだけでは足りず、結局自腹を切ってさらに散髪しているとか。
儀仗服の手入れや靴磨きにかける時間もかなりのもので、クリーニングに出した儀仗服にもさらに自らアイロンがけします。以前、海上自衛官が「妻がシャツにアイロンをかけてくれたんですが、さらに自分でかけたらむっとされました」と複雑な顔で話していたのを思い出します。
靴磨きにはなんと4時間! かかるそうです。支給されたときにはごくごく普通の革靴なのに、彼らが手入れするとエナメルかと思うような光沢を放つのです。取材時、「靴を蛍光灯にかざして、蛍光灯の2本のラインが靴にまっすぐ映ったら、うまく磨けたっていうひとつの目安になります」と隊員のひとりがさらりと言っていました。
もちろん、ベルトの真鍮部分を一点の曇りもないように磨くことも忘れてはなりません。靴やベルトを磨いて休日の午後が終わることもあるそうです。
特別儀仗の訓練は、通常3日前から行なわれます。当日の華やかな表舞台の陰には、気の遠くなるほど地道で単調な訓練があります。
地方の部隊では通常儀仗を行ないますが、そこから時折、特別儀仗隊員に指導に来て欲しいという依頼があるそうです。けれどベテラン儀仗隊員いわく、「行っても言うことは『動くな』だけ。これしか指導のしようがありません」。つまり儀仗の基本は「不動の姿勢」であり、これができなければ捧げ銃や担え銃どころか、約5kgの銃剣を持つことも叶わないということです。
この気をつけの姿勢も細かく定められていて、つま先の開きは60度、目線すら動かすことは許されません。ひたすら直立不動の姿勢を崩さずにいる訓練が続きます。
灼熱の炎天下で行なわれた特別儀仗の際には、靴の裏が溶けたといいます。それほど過酷な気象条件のときでも、場合によっては何十分でも何時間でも不動の姿勢を保ち続けなくてはいけないのです。
訓練はひたすら単純な動作の繰り返しで、不動の姿勢、整列休め、方向転換、捧げ銃、担え銃、行進を根気強く、班全体がぴったり揃うまで続けます。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)12月7日配信)