防衛大学校(11)

「防大生の生声」の続きです。
Q9 プライバシーがない生活ってどう?
これははっきり2つの意見にわかれました。まずは「大丈夫派」。
「最初は大変だったけど、慣れてしまえばそれほど苦ではなかった」(A男さん)
「大丈夫だった」(B男さん)
「全然OK。むしろプライバシーがあった方が何かと壁ができるような」(F男さん)
「そんなに気にならない。逆に仲良くなりやすくていいと思う」(G男さん)
一方、「辛かった派」は、
「自分の時間がないというのはきつかった。同室の人たちに溶け込むまでも大変だった」(C子さん)
「携帯を持っていても、ひとりになって電話できる時間も場所もない」(吉田)
ただし
「他人とこんなに家族のように暮らせる環境はとてもよいと思う」(E子さん)というように、プライバシーがない生活にも次第に慣れていくようです。
Q10 一般の大学生をうらやましいと思ったことは?
「もともと自衛隊に入ろうと思ったのも、ちゃらちゃらしている大学生が嫌いでああはなりたくないと思っていたから。だから全然うらやましくない。自分が大学生という意識もないので、一般大学生と比べることもない」(A男さん)
「最近は防大を大学というよりも仕事という形で見るようにしているので、大学生よりもむしろ部隊と比べる」(D男さん)
と、この特殊な環境をあまり大学とみなしていない声もありました。
それでも多くの学生が「自由に外出できるのがうらやましい」と答えました。
また、
「一人暮らしをしたことがないので、それも少し憧れる」(F男さん)
「バイトをやってみたかった。もう公務員なのでバイトできないから」(G男さん)
という、今の状況では叶わぬ夢も。
「おしゃれできるのがうらやましい。高校時代、親に『髪を染めるのもピアスもダメ、でも大学に入ったらいいよ』と言われてた。ところが防大に入ったら髪を染めるどころか切らされて、高校生よりむしろひどくなった!」(C子さん)
Q12 防大をやめたいと思ったことは?
7名のうち、ノーと答えたのは
「迷いはあったけれど、本当にやめようと思ったことは多分ない」(A男さん)、「ないです」(G男さん)の2名のみ。
「1年生の最初に迷ったことがあったけれど、それ以降はない」(D男さん)の意見に代表されるように、最初の1年間は、個人差はあっても多くの学生が「やめたい」と葛藤するようです。
「1日のうちに何度も思った」(C子さん)
「着校してから入校式まで、5日間ほど猶予期間がある。そのとき、2年になったばかりの人が4年生に怒られているのを間の当たりにして、先輩ですらこんなに怒られるような環境で自分がやっていけるのかと不安になった。その5日間はろくに眠れなかった。実際、入校してから何度もやめたいと思った」(F男さん)
「夜寝る前に『明日やめよう』、朝起きて『あと1日だけ頑張ってみよう』、その繰り返し。ただ、1年と2年の格差が想像以上に大きかったので、2年生を知らずにやめないでよかったと思う」(E子さん)
「何度もやめたいと思った。それで休日も引きこもりがちになっていたとき、『鎌倉に行って女の子と写真を撮って来い』と指令外出(※)で鎌倉へ。そのとき写真を撮らせてもらった人が現在の彼女」(B男さん)という運命の出会いも!
もっとも辛いのは最初の1年間。それを乗り切れば、防大生活はぐっと過ごしやすくなるようです。
※指令外出 上級生が下級生に対して行き先を指定して外出させること。下級生は言われるがまま、必ず従わなくてはなりません。このケースのように、元気のない下級生を力づける目的もあります。
Q13 防大に入らなければどんな進路を選んでた?
「もう一度防大を受験する」と答えた学生はゼロ。
「一般隊員として入隊していた」(A男さん)
「曹候補学生にも受かっていたので、曹学で自衛隊に入隊していたと思う」(G男さん)
と、自衛隊に入隊すると答えた学生が2名。
一般大学に進学したと答えたのが4名。
「うちの家系は結構信心深いので、お坊さんになってかも」(F男さん)
という個性派が1名という結果になりました。
Q14 入校して心身にどんな変化があった?
ほとんどの学生が口を揃えて言ったのは、「走れるようになった」。
スピード、距離、いずれの点でも相当走る力がついたといいます。なかには
「みんなと歩調を合わせて声を出して走っていると、息が上がってきてもまだ頑張れる」(E子さん)
という声も。また、
「打たれ強くなった」(F男さん&津上)
「親元を離れて生活して、精神的にしっかりしたと思う」(C子さん)
というように、精神的にも鍛えられたという意見も多かったです。
防大はまさに強靭な心身が育まれるところなのです。
次回は防衛大学校連載の最終回です。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)11月9日配信)