防衛大学校(3)

今回は防衛大学校での学びについてご紹介します。
防衛大学校では教育訓練・学生舎生活・校友会という3本柱からなる教育が行なわれています。
文科省の定める大学設置基準に準拠し、教養教育・外国語・体育・専門基礎の科目と専門科目(人文・社会科学専攻と理工学専攻)を一般大学と同じように教育すると共に、防衛学の教育を行なっています。
図書館、実験設備、運動施設など施設は充実し、教育環境は良好です。英語教育にも積極的に取り組んでおり、毎年1回無料で受験できるTOEIC(英語能力テスト)は、卒業までに200点は伸ばすことができるとか。
ほかの大学には見られない防衛大学校独自の教育が「防衛学」です。防衛学は複雑で広範な安全保障・防衛に関して基礎的・体系的に理解できるよう幅広い科目(防衛学概論、世界・日本戦争史、戦略、軍事と科学技術、作戦、統率など)で構成されているほか、少人数のゼミナール形式で安全保障・防衛に関する諸問題の研究も行なっています。
防大生は全員書くことになっている卒業研究論文では、優秀な論文の場合、その成果を専門学会で発表する機会もあります。
また、成績優秀者は短期留学したり、士官学校主催の国際情勢会議などに派遣されたりもします。
学業だけでなく、自衛官の必要とする基礎的な訓練要領について練成し、陸・海・空各自衛隊の機能について理解を深めるための訓練も欠かせません。
1~2年は毎週1回2時間、3~4年は隔週1回2時間の訓練過程教育と春夏秋冬の定期訓練(年間約6週間)があり、4年間の訓練時間は計1005時間におよびます。
1年では敬礼や歩き方の訓練などの基本教練、射撃訓練のほか、8キロ遠泳訓練、北富士演習場での定期訓練(約1週間)などが行なわれます。
2年ではカッター競技会やスキー訓練、3年では硫黄島研修や断郊競技会などが行なわれます。
なお、2~4年はこれらの共通訓練に加え、陸・海・空の要員ごとに行なう専門訓練もあります。たとえば陸自要員なら戦闘訓練、海自要員なら航海概論、空自要員なら滑空機訓練といった具合です。
一般大学で卒業に必要な単位数が124単位であるのに比べ、防大のそれは151単位。しかもこういったかなりハードな訓練も必須とあって、防大生は遊ぶ暇もない多忙な毎日を送っています。
防衛大学校の大きな特徴のひとつに、学生全員で構成される学生隊があります。
学生隊編成の目的は「学生の共同生活を円滑にすること、将来部隊においての指揮、指導、管理などの能力向上に役立てること、自律心を育てること」。
学生隊は4個大隊からなり、1個大隊は4個中隊、1個中隊は3個小隊で編成されています(1個小隊は約40名)。
学生隊の運営は、訓練部長や各指導教官(幹部自衛官)の指導のもと、各学生長や週番学生などによって自主的に運営されており、教育や訓練、各種競技会といった活動は、この学生隊を単位として実施するのが原則となっています。
全学生を校内の学生舎に居住させること、それらの学生による組織として学生隊を編成することは、防大創立当初からの方針だったそうです。そう、防大生は出身地に関係なく、全員入校と同時に学生隊に属し、卒業までの4年間、校内の学生舎で規律正しい生活を送ることになるのです。これには例外はなく、海外からの留学生もほかの学生同様に学生舎生活を送ります。
部屋は1~4年が2名ずつの8人部屋で、自習室と寝室の2部屋からなります。そのほか学生舎には集会室、応接室、面談室、シャワー室、洗濯室などが完備していて、どこも隅々まで掃除が行き届いてピカピカです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)9月7日配信)