防衛大学校(2)

今週は防大の沿革の続きからです。
防大はポスト冷戦時代の大きく変動する内外情勢に対応し、教育の改編を重ねてきました。
まず平成元年4月、理工学専攻の6専門が14学科に再編成されました。このときはカリキュラムも一部変更され、学業に必要な単位数や訓練の時間数が削減されています。ゆとりの確保を通じて、自主自立の精神を育てようとしたのが目的です。もともとは8人部屋だった学生舎を段階的に2人部屋体制へ移行させたのも、このゆとり確保の一環です(このゆとり教育、今やさんざんな言われようですね。ゆとり世代についてもしかり。2人部屋も結果として失敗でした)。
平成2年度からは、留学生に対する日本語課程が開設されました。
そして平成4年、第40期生にして初めて女性が入校。また、この40期生と入れ替わりに卒業した第36期生から、防大の長年の悲願であった「学士」の学位が授与されるようになりました。
学生舎生活の面では、平成9年度に4人部屋・学年混合制に戻っています。それまでの2人部屋体制では自習室と寝室とのけじめがつかず、学年間のつながりも希薄になる傾向があったためです。ちなみに現在は4人部屋からさらに増え、1学年各2名の8人部屋となっています。
理工学研究科教育課程の改革、総合安全保障研究科の開講など研究科の充実も進んだほか、平成12年、平成24年にはカリキュラムの大きな改編も行なわれました。
現在、防大には教官を含む事務官など600名以上と自衛官約250名が教職員として勤務し、防大とそこで学ぶ学生たちを支え、育てています。
自衛隊をめぐる環境は草創期から大きく変化しましたが、防大が幹部自衛官養成のための高等教育機関であることは一貫しています。
学生は全員が校内の学生舎に居住します。被服や寝具、食事なども貸与または支給され、自分の都合だけで授業や訓練を休んだりすることは許されません。一般大学でいう「自主休講」などありえないですね。
身分は自衛隊員(特別職国家公務員)であり、学業、訓練に専念することが仕事です。このため入学金や授業料はかからず、毎月学生手当として11万1800円(平成27年4月現在)の給与が支給されます。学生手当からは、共済組合掛金、団体保険掛金等が控除され、実際の受取額は約9万3000円になります。ほか、6月と12月の年2回の期末手当、いわゆるボーナス(年35万2170円)もあります。
アルバイトは許されない防大生にとって、基本的にこれが収入のすべてです。校友会(いわゆる部活動)で必要となる費用や日用品の購入などに充てるだけでなく、中には毎月実家に仕送りする孝行息子&娘もいます。
また、外泊が許される2年生以降になると、学生数人で家賃を折半して横須賀市内にアパートを借り、そこに私物を置いたり休日の外出の拠点にしたりするのですが、この家賃も学生手当から拠出します。
次回は「防大でなにを学ぶ?」をお届けします。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)8月31日配信)