自衛太鼓@音楽まつり(1)

毎年秋に日本武道館で開催されている「自衛隊音楽まつり」は、チケット入手が困難な人気イベントとして名高いイベントです。
なかでも一度聴いたら忘れられない強烈な印象を人々に植え付けるのが「自衛太鼓」。
その実力と迫力は「これを見るために音楽まつりに行く」という熱狂的なファンもいるほど(とはいえ現実はチケット入手がきわめて困難なのですが……この件についてはかねてから思うところあるのですが、それはまた別の機会に)。
全国の部隊から選ばれた太鼓チームの合同演奏は、音楽まつりの代名詞ともいえます。
一糸乱れぬ動きで勇壮な音色を響かせる隊員たちの、当日までの練習風景をリポートします。
横須賀市、武山駐屯地の体育館から、地鳴りのような音が聞こえてきます。
自衛隊音楽まつりに備え、全国から集まった自衛太鼓チームが一堂に会し、合同練習を行っているところです。
体育館の扉を開くと、そこには圧倒的なボリュームの太鼓の音と、びりびりに震える空気が充満しています。
自衛隊の太鼓チームは、全国に100チームは存在するそうです。すべて課業外に行われるクラブ活動なので、隊員たちが自主的に入会して活動するものです。
休日は地元のお祭りやイベントに招かれ太鼓を披露することも多く、休日ごとにどこかしらでお祭りをやっているような夏季は、相当忙しいらしいそう。また、当然ながら本業の訓練や演習が優先なので、思うように練習時間が取れないことも少なくありません。
それでも隊員たちが太鼓を続けるのは、頑張った分だけ上達する充実感、仲間とリズムをそろえて太鼓を打ち鳴らす一体感、観客から大きな拍手を受けたときの達成感を味わうためなのかもしれません。そして努力の集大成を披露するステージが、日本武道館なのです。
今年度も全国から腕に自信のある選りすぐりが、10月末、武山駐屯地に集結しました。
普段は課業外に限っている練習も、音楽まつりとなると扱いは別です。途中で練習場所を朝霞駐屯地へ移し、本番を迎えるその日までひたすら合同練習に明け暮れるのです。
ちなみに、取材班が武山駐屯地を訪れたのは、合同練習が始まってから1週間経っていない時期。それでもその時点ですでに音や動きがしっかりそろっていたのは、さすが自衛官です。
音楽まつりに参加する太鼓チームが集合して最初に行われるのは「練度判定」です。
これはほかのチームが全員見ている前で自分たちのチームの腕前を披露し、合同練習に参加できる練度に達しているかを試されるというもの。
練度判定はある意味本番よりも緊張するそうです。わかる気がします。ある隊員は、「ほかのチームは仲間でもあるしライバルでもあるので、じっと見られながら演奏するのはめちゃくちゃ緊張します。うちは一発OKだったんで、ホント、ほっとしました!」。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)7月20日配信)