与那国駐屯地と沿岸監視隊(2)

与那国駐屯地は与那国空港から車で10分ほど、与那国町で2番目に人口が多い久部良地区の丘の上にあり、四方を見渡せる立地にあります。
低層の設計のうえ、白壁に赤瓦の建物は「自衛隊の建物と思えないほど周囲に溶け込んでいる」と島民からも好評です。実際、全国各地の「ザ・質実剛健」的な趣とは明らかに一線を画す外観は、島民感情を相当意識して設計されたものと思われます。おそらくこれから建設される宮古島や石垣島などの駐屯地の建物も、与那国駐屯地の庁舎のデザインを踏襲するのではないかと想像しました。
立地については自民党政調会審議役の田村重信氏によるリポート「国防最前線・南西諸島はいま 第1部 与那国島・陸自駐屯地」に、次のような説明があります。
「駐屯地の立地は抜群にいい。南に太平洋、西に台湾、北に東シナ海、東に標高198mの久部良岳が望める。さらに、海、山、港、湿地帯に囲まれ、抗堪性にも優れている。『抗堪性』とは、基地やレーダーサイトなどの軍事施設が、敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力のことを言う」。
与那国島へのアクセスは、航空機は那覇~与那国間(約80分)が1日1往復、石垣~与那国間(約30分)が1日3往復、船舶は石垣~与那国間約4時間半(週2往復)となっています。
島内交通は自家用車と無料の循環バスが基本。バスは与那国町役場の配慮があり、駐屯地開設に合わせ、駐屯地への通勤にも対応した時間・経路に変更してくれたそう。
学校が小学校3校、中学校2校。このうち与那国小学校では、これまで複式学級だった学級が自衛官の子どもが転入したことで単式になり、教員も増え、町の人に喜ばれました。
さらに駐屯地開設を契機に久部良郵便局には与那国島初のATMが設置され、これもたいそう喜ばれています。ほか、警察官2名、与那国消防団人員22名、総合病院と歯科が1軒ずつ。コンビニも書店も
ありませんが、沿岸監視隊長兼ねて与那国駐屯地司令の塩満大吾2等陸佐いわく「制約はありますが不幸ではありません」。不便=不幸とは限らないということです。
与那国沿岸監視隊は情報収集機能、駐屯地等の警備に任ずる警備小隊、そして隊本部、業務隊機能の後方支援隊からなり、部隊新編・駐屯地開設時の定員は160名です。あくまでも情報収集部隊のため、地対艦ミサイルを装備するような戦闘部隊は所在せず、塩満2佐も職種は情報科です(ただしもとは普通科、第1空挺団を経て小平学校の中国語課程に進んでいる「文武両道」のエリートです)。
編制は、与那国沿岸監視隊の下に隊本部、警備小隊、レーダー班、監視班があります。さらに後方支援隊のもと補給整備、営繕、糧食、厚生、衛生があるほか、駐屯地機能として会計、基地通信、警務があります。女性自衛官と女性事務技官は合計9名です。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)3月16日配信)