高等工科学校(3)

引き続き高等工科学校のご紹介です。先週は学校長のインタビューなどをご紹介しましたが、今週は職員をご紹介します。なお、職員や生徒の固有名詞はアルファベットでの表記とします。
 彼ら生徒の生活面と学習面、両面で生徒を支えているのが職員です。
 第2教育隊第9区隊長のA1等陸尉も、かつて生徒としてここで学んだひとりです。区隊長はおもに生徒舎生活における服務指導を実施する、区隊における親父的な存在です。
「生徒舎生活は、自衛官として必要な知識・技能を学ぶ修行の場です。私はそこで生徒29名の服務指導を実施しています。『すべては生徒のために』を合言葉に、生徒の自主自立を促すことを目的として、部隊に行ったときに恥ずかしくない自衛官に育成するとともに、部隊から信頼される人材となれるよう教育しています」
「生徒だったときは雲の上の存在に思えた区隊長の地位に自分が就けるとは思ってもいませんでした。今、こうして将来の国防を担う後輩をこの手で育て、全国に輩出できることを誇りに思います。また、生徒の成長をいちばん身近で感じられることが、仕事のやりがいにつながっています。自分の思いが生徒にうまく伝わらず悩んだ時期もありましたが、彼らの心にもっとも刻まれるのは、われわれ職員の日頃からの立ち振る舞いであると気づきました。彼らは常にわれわれ職員を見ています。それを意識し、背中で語れる区隊長を目指し日々奮闘しています」
プライベートではわが子の成長を見るのが楽しく、イクメンを目指しているそう。
「家族には申し訳なく思いつつ、朝も夜も休日も犠牲にして教育することに理解を示してくれ、感謝しています。また、生徒たちには『この学校では寝食を共にした同期という最高の仲間ができる。この同期の絆は一生のつながりとなるので、同期を大切にし、切磋琢磨して互いに成長してもらいたい』と伝えたいですね」
 B2等陸曹は、付陸曹として生徒の指導に当たっています。区隊長が父親なら付陸曹は母親、区隊長よりも生徒との距離が近い分、生徒の変化に気づきやすくなります。
「悩みを言ってくれる生徒はいいのですが、言わない生徒に対しても気づいてやれるよう、気さくに部屋に遊びに行って会話を交わすようにしています。厳しくすべきときはしますが、リラックスした環境で対話するのもひとつの指導方法です。反応がない生徒や、返事だけよくて実際は何もしてない生徒には困ることもありますが、将来を背負っている優秀な人材であることは間違いありません。昨年は初めての勤務だったので、3月の最後には思わずうるっとこみ上げるものがありました(笑)。教育に当たって重視しているのは、基本基礎の徹底と、私自身が曹学出身のため経験不足に苦労したので、自分が経験したことはできるだけ後輩に伝えるようにするということです。生徒たちには、ゆくゆくは上の気持ちも下の気持ちもわかる自衛官になってもらいたいです」
 B2曹のふたりの子どもはまだ小さいけれど、「こんな生徒のように育ってほしいな」と思う生徒もいるそうです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成28年(西暦2016年)11月10日配信)