オリンピックと自衛隊(21)

長らく続いてきた「オリンピックと自衛隊」の連載は、来週で終了です。
 今週と来週は、日本時間の19日0230からフェンシング予選、20日2200に5種目が行なわれる近代五種競技についてご案内します。
 近代五種競技は、オリンピックの創始者であるクールベルタン男爵がナポレオン戦争の故事をヒントに発案した、いわば「オリンピック生まれのミリタリースポーツ」です。
 それだけに、体育学校だから五輪代表選手を送り出すのは必須という、常に高いハードルを設定された宿命の種目でもあります。
 1964年の東京大会から1992年のバルセロナ大会までは毎回代表を送り出していましたが、その後3大会出場を逃します。
 しかし北京、ロンドンと再び連続出場を果たし、ロンドンでは山中詩乃3等陸曹(当時は士長)が女子初の代表となったことが話題になりました。今回は体育学校から三口智也3等陸曹と岩元勝平3等陸曹のふたりが出場します。
 フェンシング、水泳、馬術、コンバインド(射撃、ランニング)という5つの競技は、かつての東京大会では1日1種目で5日間にわたって行なわれましたが、現在は1日ですべての種目を行なう形となっており、その分1日の競技時間は約8時間におよびます。
 フェンシングはエペ(全身すべてが有効面で、先に突いたほうにポイントが入ります。日本選手が強いフルーレの有効面は胴体のみ)による1分間1本勝負の総当たり戦、水泳は200m自由形、馬術は貸与馬による12障害15飛越、射撃とランニングを交互に4回行なうコンバインドでは制限時間50秒以内にレーザーピストルで的に5回命中させることと、800m走を4回行ないます。
 ゴールした順位が最終順位となるので、最後のコンバインドは観戦していても見ごたえがあり、会場も盛り上がります。
 体育学校の近代五種班の監督は、バルセロナオリンピックの日本代表であり日本近代五種協会競技力強化副委員長でもある宮ヶ原浩1等海尉が務めています。
「私が代表の頃に比べて選手の層は厚くなり、世界の強豪と互角に戦えるようになりました。特に水泳のレベルは高く、世界でもトップクラスです。フェンシングさえ取れれば、リオでも入賞の可能性は高いでしょう。体育学校は5種目すべてを練習できる施設が整っているという、非常に恵まれた環境です。しかし近代五種が人気競技であるヨーロッパではクラブチームも多数存在し、中国や韓国もそれに習ってクラブチームで中学生くらいから選手を育てていますから、高校や大学を出て体育学校に入校してから競技を始める日本は、スタート時点で差がついてしまっているのが現状です」
 しかもフェンシングや乗馬は、入校後に生まれ始めて取り組むという選手がほぼすべて。水泳でめぼしい選手をスカウトして採用しても、そこから育てるには最低3~4年、選手によっては5~6年かかります。これでは日本代表にはなれても、世界で通用するのは難しいでしょう。
けれど2015年度から始まった高卒の体育特殊技能者採用により、近代五種にも2020年にメダルを目指す選手が入ってきました。さらにリオと 東京、2つのオリンピック出場を目指せる有望な選手もいます。そのひとりが岩元勝平3曹です。
 来週は岩元3曹にインタビューした際に聞いた話などもご紹介します。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(平成28年(西暦2016年)8月11日配信)