陸上自衛隊通信団第301映像写真中隊(2)

第301映像写真中隊(以下、映写中)が陸上自衛隊のみならず陸海空全自衛隊が関わる行事において撮影を担当する映像写真のプロ集団であることを、先週のメルマガでご紹介しました。
先週ご紹介した任務だけでなく、自衛隊が海外派遣される際も随行し、現地での活動を記録しています。国際緊急援助活動と国際平和協力活動には常時要員が指定されていて、私が取材した頃はイラクに常時2名が派遣されており、ちょうど9~10人目の要員が行っているとのことでした。イラクでは自衛隊の活動を記録して日本に発信するだけでなく、何と地元の放送局に流すCMも現地で撮影・編集していたそうです。まさに全国のみならず世界に展開する部隊です。
 常に複数の任務が同時進行しているので、隊員たちは少人数で行動することが多くなり、必然的にどんな器材、どんな作業でも扱いこなす技術が求められます。そしてその技術を維持するために、練成訓練も絶えず行わなくてはなりません。演習場では小銃を担ぎ、擬装したカメラを抱え、草むらに潜む。タフな部隊なのです。
 映写中は中隊本部、映像小隊、写真小隊からなります。映像小隊は動画担当、総火演のライブ配信はこの小隊が行っています。写真小隊はスチール専門で、防衛大臣公式カメラマンの隊員が内局に「出向」しています。いずれも自己完結の自衛隊らしく、撮影から編集まで映写中だけで完結できる実力を持っています。
 防衛省にはA~E棟の建物がありますが、映写中はその一角に2階分が吹き抜けのスタジオを所有しています。取材時には「昨年、念願だった天井からの照明装置が設置された」とのことでした。
その日はビデオで使用するキャスター撮りの教育が行われていました。案内してくれた隊員によれば、こういう教育の場を設けることで、キャスターやカメラマン、照明、音声、すべての隊員の教育が一度に行える利点は大きいとのことでした。個々の技術を磨くのはもちろん大事ですが、収録に関わる者全員が同時に力を発揮することも大切だからです。
照明の光量を微調節したり、キャスターがテロップを読みやすいようプロンプタに写る文字の大きさを調整したり。それぞれの役目を果たしている中で、ある隊員が、天井から下がっているライトを長い棒の先に引っかけて上げ下げしていました。自動で動かせるライトは値段が3倍もするのだそうです。いま欲しい機材は何ですかとそばにいた隊員に尋ねたところ、ちょっと考えてから「ライトを引っかける長い棒がもう1本欲しいです」。実に控えめなリクエストでしたが、その後叶ったのでしょうか。
次回は映像調整室の様子からご紹介します。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)4月23日配信)