陸上自衛隊通信団第301映像写真中隊(1)

自衛隊音楽まつりや富士総合火力演習で、「広報」ではなく「撮影」という腕章をつけた隊員がカメラを回しているところを見かけたことはないでしょうか。あるいは重そうな望遠レンズをつけたカメラからシャッターチャンスを狙っている姿を。
人目に触れる機会は多いのに彼らが主役であることはまずない、それが第301映像写真中隊です。
以前取材した際、記事のタイトルは「記憶に残る記録の守護神」としました。ちょっと情緒的過ぎるきらいはありますが、数日間部隊に密着取材して感じたままの思いでもありました。
防衛省と同じ敷地内にある市ヶ谷駐屯地に所在する第301映像写真中隊。その歴史は長く、昭和29年に第301写真中隊として発足、その後通信団に編合し、平成12年に現在の映像写真中隊となりました。
通信団に編成されている、どの方面隊にも属さない大臣直轄部隊であり、陸上幕僚監部などのための映像写真業務を担う唯一の専門部隊、かつ自衛隊最大の映像写真部隊です。
基本任務は多岐にわたります。まず、陸上幕僚監部などのための映像写真業務をはじめ、寒冷地試験や酷暑試験、演習にも立ち会って撮影します。
また、自衛隊音楽まつりや富士総合火力演習のほか、幹部学校などの各種学校、市ヶ谷所在部隊の撮影も行います。私が取材した頃にはまだほとんどなかった総火演等の動画配信も現在は取り扱っているので、業務は以前にも増して増えているはず(そして員数はまず増えていないことでしょう)。陸自のみならず自衛隊全体としての行事や式典、国賓が絡む行事、米軍等との各種共同訓練などの撮影はすべて映写中の担当、要は撮影のプロ集団です。陸自で「写真」のMOSを持つ隊員にとって、映写中は精鋭の集まる憧れの部隊かもしれません。
さらに、あらかじめ日程が決まっている撮影以外にも、山のような依頼が次々と舞い込んできます(公務で海外に行く隊員のパスポート写真の撮影だって行います)。取材中、映像写真中隊の受付には、撮影を申し込む人がひっきりなしに訪れていました。
映写中の仕事は撮影して終わりというわけではないのがまた大変なところです。
スピーディに写真を処理し、映像を編集し、プリントやCD、あるいはビデオといったユーザーの望む形にして納めるまでが彼らの仕事。この編集業務には案外時間がかかるのです。みなさんが自身で撮った動画をPCで編集するとなると、切ったり貼ったり文字を入れたり、仕上がりのよさを求めれば求めるほど細かな作業が必要となり時間がかかりますよね。それと同じことです。
また、撮影した素材の管理も大切な任務のひとつです。ライブラリーには膨大なVTRや写真フィルム、16ミリ映画が保管されています。取材当時はライブラリーの効率化が進められており、ユーザーが執務場所でデータベースを活用できる環境を構築中でしたから、今はきっとデータベースから探し物を見つけられるようになっていることでしょう。
次回も映写中のお話です。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)4月16日配信)