自衛隊海外派遣の歩み (15)

「自衛隊海外派遣の歩み」は来週が最終回です。
今週、来週の2回は、現在活動中の取り組みについてご紹介します。
●南スーダン国際平和協力業務(PKO)
スーダン南部が独立前は、スーダン政府(イスラム教・アラブ系)と
スーダン人民解放運動・軍(キリスト教・アフリカ系)の対立が
長年にわたり続いていました。犠牲者の数は約200万人とも言われています。
2005年1月、両者はCPA(南北包括和平合意)に署名、ようやく紛争
は終結。
同年3月、CPA履行支援等を任務とする国連スーダン・ミッション(UNMIS)
が設立され、日本は2008年10月以降、UNMIS司令部要員として
自衛官2名を派遣していました。
2011年7月の南スーダン独立に伴い、UNMISがその任務を終了する
一方、新たに国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立されます。
日本は国連事務総長からの協力要請に基づき、同年11月より司令部
要員2名(兵站幕僚および情報幕僚)を派遣、2012年1月には施設部隊等
を派遣しました。
派遣部隊は、自衛隊の得意分野を活かしたインフラ整備などにより、
南スーダンの自立的発展に寄与することが期待されていて、
国連施設の整備や道路補修、国際機関の敷地整備等の施設活動を
実施する中で、ODAやNGOなどとも連携しています。
同年4月から国連施設外での活動を開始、翌月には活動地域拡大に
関する自衛隊行動命令が発出され、派遣施設隊の活動地域は東および
西エクアトリア州にも拡大されました。
ところが12月以降、南スーダンにおける治安情勢が悪化。以来、派遣施設隊
はジュバの国連施設内で、避難民の支援として、避難民保護区域の敷地造成
などを実施しています。
覚えていらっしゃいますか? 2013年12月、南スーダンの治安情勢が急速
に悪化するなか、要請を受けた自衛隊が韓国軍へ弾薬を譲渡するという
出来事もありました。孤立無援になった韓国軍に、同じ現場に携わる立場として
可能な範囲で力になりたいと思う、派遣部隊指揮官の判断でした。残念ながら、
というか当然ながらそこに政治が絡み、韓国側は「頼んだ覚えはない」と言いはじめ、
翌月には貸したわけではなくあげたはずの弾薬が返却されました。個人的には
かなりむかっとしましたが、おそらく現場レベルでは心が通じ合っていたのでは
とも思います。だから韓国軍の指揮官も、この顛末につらい思いをしたのではないかと。
現在は第10師団を基幹とした第9次要員約350名が派遣されています。
第9次要員は今年5~6月まで首都ジュバ周辺で道路整備などにあたっており、
昨年制定された安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」の新任務は付与
されていません。
スーダンPKOは2016年2月末に期限を迎えましたが、さらに8か月間延長される
ことが決まりました。その際に安倍首相は、駆け付け警護などの任務拡大の検討
をすると言いました。
次に派遣される第10次要員は、すでに新たな任務に備えた訓練を行なっている
かもしれません。
次回はソマリア沖・アデン湾における海賊対処と、最後に、安全保障関連法成立
によって自衛隊の海外派遣がどう変わるのかをご紹介してフィニッシュです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成28年(西暦2016年)3月10日配信)