自衛隊海外派遣の歩み (14)

先週は各種特別措置法に基づく活動の実績をご紹介しました。そのうち、旧テロ対策特措法に基づく協力支援活動として、インド洋で給油活動を行なった派遣部隊の指揮官と隊員へインタビューした際の一部をご紹介します。
指揮官
「幸いわれわれの派遣された時期は、最高気温がせいぜい34度程度と比較的涼しい時期だったので、その点は非常に恵まれていました。(略)最後までひとりのけが人も病人も出さず、大きな故障もなく無事に帰国できた原因のひとつには、この気候的条件もあったと思います。(略)私がインド洋に行った時期はちょうど補給艦の数が少なくて、『ときわ』が引っ張りだこで大変感謝されました。日本がこれだけ立派な補給艦を送ってくれて洋上で給油してくれる、それがどれほどオペレーションの効率化に役立っているかわからないと、再三言われました。また、帰国してからアメリカのベーカー大使にお会いした際、大使は『あなたは偉大な貢献をされた』と自らコーヒーを注ぎ、温かく迎えて下さいました。そのときも『ああ、われわれの派遣部隊はこれだけ高く評価されたんだな』と大変うれしく思いました」
2等海尉
「100キロリッターという燃料を搭載するのに、自衛隊なら何分でできるという時間がありますが、ある国ではその3倍、4倍の時間がかかったりします。補給を受けているときというのは船がとても弱い状態ですから、われわれは『迅速に作業を終わらせる』という教育を受けてきています。できるだけ早く補給して離脱するのが望ましいという考えなので、そういうのんびりしたペースに最初は戸惑いを感じました。けれど相手にしてみれば、危険な海域で補給はしない、後方の安全な場所でこうやって補給してもらうんだから、そんなに大急ぎでやる必要はないという考えなのかもしれません。また、現場では想像していた以上に英語力が必要だったこと、用具の点検は見るだけではなく、裏側まで手で触れて確認することが大事だということなど、新たな発見や、すでに実践していたことの重要性を再確認したりしました」
 続いては、国際緊急援助法に基づく国際緊急救援活動の実績です。
 1987年に制定された国際緊急援助法(正式名称は国際緊急援助隊に関する法律)は、海外において大規模な自然災害等が発生した場合、被災国政府等の要請に応じて国際緊急援助活動を行なうことを定めています。
 もともとは国際協力機構(JICA)主体で行なわれていましたが、1992年に法改正され、自衛隊の参加も可能となりました。また、2006年に統合幕僚監部が新設され統合運用体制となったことで、国際緊急援助活動においても統合任務部隊が編成できるようになりました。
 自衛隊の海外派遣の法的根拠でもっとも多いのが、この国際緊急援助法です。以下、ずらりと並びます。
●ホンジュラス国際緊急援助活動(ハリケーン災害) 1998年11月~12月 185名
●トルコ国際緊急援助活動に必要な物資輸送(地震災害) 1999年9月~11月 426名
●インド国際緊急援助活動(地震災害) 2001年2月 94名
●イラン国際緊急援助活動(地震災害) 2003年12月~2004年1月 31名
●タイ国際緊急援助活動 (地震・津波被害) 2004年12月~2005年1月 590名
●スマトラ沖大規模地震及びインド洋津波における国際緊急援助活動(地震・津波災害) 2005年1月~3月 925名
●ロシア連邦カムチャッカ半島沖国際緊急援助活動(潜水艇事故) 2005年8月 346名
●パキスタン・イスラム共和国への国際緊急援助活動(地震災害) 2005年10月~12月 261名
●インドネシア共和国における国際緊急援助活動(地震災害) 2006年10月 234名
●インドネシア国際緊急援助活動(地震災害) 2009年10月 33名
●ハイチ共和国における国際緊急援助活動(医療活動)関連 2010年1月~2月 234名
●パキスタン・イスラム共和国における洪水被害に対する国際緊急援助活動 2010年8月~10月 514名
●フィリピン共和国における台風被害に対する国際緊急援助活動 2013年11月~12月 約1100名
※大型の台風により壊滅的な被害を受けたフィリピンに対し、国際緊急援助活動では初となる統合任務部隊「フィリピン国際緊急援助統合任務部隊」を組織し、過去最大規模となる約1100名態勢で同国における救援活動を実施。統合運用のもと、のべ2946名の診療、のべ1万1924名へのワクチン接種、約9万5600平方メートルの防疫活動、約630トンの物資の空輸、のべ2768名の被災民の空輸などを実施しました。
●マレーシア航空機消息不明事案に対する国際緊急援助活動 2014年3月~4月 130名
クアラルンプール発北京行きのマレーシア航空機370便が消息を絶ったことを受け、海自のP-3C哨戒機2機および 空自のC-130H輸送機2機が計46回、約400時間の捜索救助活動を実施した。
●西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行に対する国際緊急援助活動に必要な物資の輸送(ガーナ共和国) 2014年12月 14名
※国際連合エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)からエボラ出血熱の感染拡大への対応に使用する個人防護具の提供等につき要請があり、西アフリカ国際緊急援助空輸隊を編成して輸送活動を実施。また、ガーナ現地調整所を設置し、国際緊急援助活動に従事する外務省、国際協力機構(JICA)、UNMEERおよびその他関係機関との調整を行ないました。
●インドネシア・エアアジア機消息不明事案に対する国際緊急援助活動  2014年12月~2015年1月 350名
※スラバヤ発シンガポール行きのエア・アジア8501便がカリマタ海峡付近で消息不明に。ソマリア沖での海賊対処活動を終えて帰国途上にあった派遣海賊対処行動水上部隊(護衛艦おおなみ、護衛艦たかなみ、および艦載ヘリ3機)が、インドネシア国際緊急援助水上部隊として現場海域において捜索救助活動を実施しました。
海賊対処法に基づく活動の実績
●ソマリア沖・アデン湾における海賊対処 2009年月3月~現在
次週は現在活動中の取り組みについてご紹介します。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成28年(西暦2016年)3月3日配信)