2015年陸海空自衛隊の装備と運用(8)

2015年度の防衛予算に含まれる新規事業を中心に、2015年の陸海空自衛隊の装備と運用についてご紹介する第8回目です。
先週は、米国との共同訓練の話でした。今回は弾道ミサイル攻撃への対応とサイバー空間における対応、そして人事教育に対する施策についてご案内します。
弾道ミサイル攻撃への対応
昨年、3月に2度、6月に1度、7月に3度と、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が相次ぎました。いずれの弾道ミサイルも約500キロ飛翔し、日本海上に落下したと推定されています。
そしてまさに今も、10月10日の朝鮮労働党創建70周年に合わせ、長距離弾道ミサイル発射実験を行う可能性を示唆しています。
 防衛省は弾道ミサイル攻撃への対応として、今年は耐用命数を迎えるPAC-3ミサイルの部品(シーカー部)を交換するとともに、ミサイル全体の点検を実施し、所要のPAC-3ミサイルを確保するとしています。
 また、弾道ミサイル攻撃に併せ、同時並行的にゲリラ・特殊部隊による攻撃に対応する態勢を整備するため、新除染セットと化学剤検知器(改)の取得を予定しています。
 新除染セットは核・生物・化学(NBC)攻撃などにおける大量の人員や装備品の汚染等に迅速に対処して、被害の拡散や二次被害等を最小限にとどめるため、各種の除染能力を強化したものです。
さらに現有多用途ヘリUH-1J(台風18号による常総市での人命救助でも活躍しました)の後継として、各種事態における空中機動、大規模災害における人命救助等に使用する新多用途ヘリコプターUHXの開発も開始されます。
 7月17日、開発業者は富士重工業に決定。選定には川崎重工業も参加していましたが、開発期間や価格面で富士重が優れていると判断されました。この選択には賛否両論あるようですが、すでに決定したこと。富士重と米ベル・ヘリコプターが共同開発する民間用ヘリを陸自向けに改修し、2021年度末から部隊に配備、20年間で計150機を調達する予定です。
 UHXはゲリコマ攻撃事態への対応だけでなく、島しょ侵攻事態、各種事態における空中機動、航空輸送、患者の後送等の戦闘支援、大規模震災における人命救助、住民の避難、空中消火、航空偵察、国際平和協力活動等における支援物資空輸等、多用途ヘリだけに多彩な場面での活用が期待されます。
サイバー空間における対応
 昨年3月、日々高度化・複雑化するサイバー攻撃の脅威に適切に対応するため、統合幕僚監部自衛隊指揮通信システム隊にサイバー防衛隊が新編されました。
 防衛省・自衛隊のネットワークの監視及びサイバー攻撃発生時の対処を24時間体制で実施するとともに、サイバー攻撃に関する脅威情報の収集、分析、調査研究等を一元的に行なっています。
 今年もサイバー攻撃に対する十分なサイバー・セキュリティを常時確保できるよう、人材育成を含め、サイバー攻撃対処能力の検証が可能な実戦的な訓練環境の整備等、所要の態勢整備を行なっています。
 新規事業は、サイバーレンジの構築等に関する独立行政法人情報通信研究機構(NICT)との研究協力、防御の実効性を高めるための演習対抗機能の設置に向けたサイバー空間の利用を妨げる能力に関する調査研究、実践的な学習教材・教育プログラムとしてのシリアス・ゲーム(教育)導入に向けた取り組みなど。これらによって実戦的なサイバー演習環境を整備します。
人事教育に関する施策
 優秀な人材を確保するため、複数の施策が予定されています。まず自衛官候補生の適性検査の問題を見直し、現代の受験者に適したより実効性のある検査にします。
 また、予備自衛官等協力事業所制度(仮称)による予備自衛官等の雇用拡大、技術貸費学生の採用枠を拡大し自衛隊における技術系分野の強化を図るほか、海自が予備自補を導入することで民間海上輸送力の活用を見込んでいます。
次回は大規模災害などへの対応についてです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)9月17日配信)