2015年陸海空自衛隊の装備と運用(6)

2015年度の防衛予算に含まれる新規事業を中心に、2015年の陸海空自衛隊の装備と運用についてご紹介する第6回目です。
先週は、オスプレイとAAV7を中心とした装備品の話でした。今回は陸上総隊、水陸機動団新編の準備の話です。
 組織の改編では、陸自の各方面隊を束ね一元的に指揮する陸上総隊を新編するために準備室が設置されます。陸上総隊の新編についてはこれまでも何度か検討されては見送られるということを繰り返しており、25大綱でようやく明記されました。
海自は自衛艦隊、空自は航空総隊により命令が一元化されていますが、統幕長から陸自への指令・指示は各方面総監部へ出す必要がありました。陸上総隊ができることで、統幕長からの報告や命令は陸上総隊のみで済むほか、海自、空自、米軍との調整も総合的に行うことができます。
 ただし方面総監部の廃止については25大綱では見送られたため、運用如何ではかえって指示系統が複雑、煩雑化する懸念もあります。これは陸上総隊が創設され実際に運用が始まってからの課題となるかもしれません。
なお、今年5月には司令部が朝霞駐屯地に配置されることが決まり、2017年度の創設に向け、今年度末には準備室が設置されます。
 また、陸上総隊の直轄部隊として新編される水陸機動団と作戦関連部隊の展開基盤の整備も行われます。
水陸両用作戦専門部隊である水陸機動団は、島しょへの侵攻があった場合に速やかに上陸・奪回・確保するための部隊であり、西部方面普通科連隊の約700人を母体に3連隊からなる約3000人規模の大部隊となります。
水陸両用作戦に必要な各種機能を保有し自ら作戦を行える米海兵隊に対し、水陸機動団は海自や空自部隊との統合運用により水陸両用作戦を行ないます。
 2018年度までに編制完結の予定ですが、それに先がけ、昨年3月末には西普連に西部方面普通科連隊教育隊が設置されました。これは水陸両用作戦を担う人材の育成を行う教育専門部隊で、教官約20人を含む25人程度で人材を育成します。具体的には離島奪還のための基本技術である洋上からボートで島に上陸する着上陸訓練などを実施し、隊員の技術向上を図ります。この水陸機動団が離島奪回時に「足」として使用するのが、オスプレイとAAV7というわけです。
 このほか、2018年までに行われる組織の効率化、合理化を目的とした改編として、戦車は本州の部隊からは廃止、北海道の師旅団と西部方面隊直轄部隊のみの配備となります。本州の部隊から戦車が消える、これはかなりのニュースですね。また、りゅう弾砲などの火砲も現在の約600両から約300両へと約半数に削減し、全国に配置されている火砲を各方面隊直轄部隊へ集約する予定です。これも相当な削り方です。
 さらに現在15ある師団・旅団のうち、7つを高い機動力や警戒監視能力を備える即応機動連隊などからなる機動師団・機動旅団に改編し、機動運用化することとしました。この機動師団・旅団が、いざという時には増援部隊として南西方面へ急派されます。
これら陸自の改編は、人も装備品も移動を大がかりな移動を伴う、従来の改編とは比較にならないほど大がかりなものとなります。
 次回は米国との共同訓練についてです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)9月3日配信)