2015年陸海空自衛隊の装備と運用(5)

2015年度の防衛予算に含まれる新規事業を中心に、2015年の陸海空自衛隊の装備と運用についてご紹介する第5回目です。
先週は、島しょ部を占領された場合の奪還シナリオを実効性あるものとするための新規事業についてご紹介し、そのひとつにオスプレイとAAV7の取得があることまでお伝えしました。本日はその続きからです。
 陸自が運用するオスプレイは17機全機を佐賀空港に配備、米軍のオスプレイの一部も佐賀空港への移転を進め、沖縄の負担軽減を図ります。佐賀空港を選んだ理由としては、島しょ部への侵攻に対処する水陸両用作戦に関わる主要部隊が多く存在する九州北部に所在していること、騒音などの面で地元住民への負担を最小限に抑制しつつ十分な地積の確保が可能であること、陸上自衛隊目達原駐屯地からも近く、同駐屯地に配備されているヘリコプターの移設先としても活用できること等を挙げています。
 8月23日に行なわれた総合火力演習では、オスプレイが飛来しましたね。
 私は行かなかったのですが、もともと陸自から海兵隊へ依頼していたとのこと。ただし離島奪回作戦のシナリオの中で登場したわけではなく、演習終了後「みなさまお気をつけてお帰りください」のアナウンスが流れた後、不意打ちのように現れたとか。予定通りのプログラムを終えた後での飛来だったので、ネット動画での生中継でも放送されなかったのですね。自衛隊側としてはもちろん「あえて」の、この時間帯での登場だったのでしょう。
 さて、オスプレイと並ぶ2015年新装備の目玉が、水陸両用車AAV7の取得です。2018年度までに新設される陸自の水陸機動団に導入する52両のうち、30両を調達します。
 AAV7は最大24名を海上から島しょ等に運ぶことができますが、アメリカではすでに生産終了している装備品であり、水上航行能力が時速13キロ程度といった不安要素があることも否めません。
 海自はAAV7輸送のためおおすみ型輸送艦を改修、空自はC-2輸送機10機の着実な整備なども昨年に引き続き継続して行ない、迅速かつ大規模な輸送展開能力を確保し実効的な対処能力の向上に努めています。ただし水陸両用作戦等における指揮系統、大規模輸送、航空運用能力を兼ね備えた多機能艦艇のあり方についてはまだ検討すべき点も多く、統合運用がいかに有効に機能するかが問われることになります。
 機動戦闘車は即応性、機動性を高める観点からも戦車に代わる装備品として2016年に装備化、全国の戦闘部隊に装備される予定です。機動戦闘車は運用構想のひとつに島しょ部に対する侵略事態対処があるため、空輸性と路上機動性に優れているほか、105ミリ砲の走行間射撃に対しても高い走行安定性を確保しています。来年、装備化された暁には大きなニュースとなるでしょう。
 次回は陸上総隊、水陸機動団新編の準備の話です。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)8月27日配信)