2015年陸海空自衛隊の装備と運用(3)

2015年度の防衛予算に含まれる新規事業を中心に、2015年の陸海空自衛隊の装備と運用についてご紹介する第3回目です。
先週は、航空自衛隊の警戒航空隊や今後三沢基地に配置される予定の早期警戒機E-2Dと滞空型無人機グローバルホーク、研究開発中の実証機などについての話でした。
 今週は、最近も連日のように中国国籍の船が領海侵犯を行なっている島しょ部についてです。
 一昨年に決定された防衛計画の大綱も中期防衛整備計画も、それに基づいた来年度予算も、すべては島しょ部をめぐる中国からの攻撃に対応しうる態勢を整えることが前提にあります。そこで、島しょ部に対する攻撃の対応についてご説明する前に、改めて尖閣諸島をめぐる日本と中国のこれまでの経緯を見てみることにします。
 尖閣諸島は南西諸島西端に位置する魚釣島や久場島、北小島、南小島などからなる島々の総称で、沖縄県石垣市に属しています。
 石垣島の北約170キロ、沖縄本島の西約410キロに位置し、最も大きい魚釣島が3.6平方キロメートル。日本政府は尖閣諸島が無人島かつ他国の支配が及ぶ痕跡がないことを検討した上で、1895年1月、国際法上正当な手段で尖閣諸島を日本の領土に編入しました。編入以降は日本人が移住、最盛期には200人以上の日本人が居住していたといいます。
 戦後は沖縄の一部としてアメリカが施政下に置き、射爆撃場として使用していました。1972年の沖縄返還協定では、日本に施政権を返還する対象地域にも含まれているなど、尖閣諸島は一貫して日本領土として扱われてきました。中国政府は、1895年の尖閣諸島の日本領への編入から約75年の間、日本による尖閣諸島の実効支配に対し一切の異議を唱えていませんでした。
 それが1960年代後半に、東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘され尖閣諸島に注目が集まると、いきなり尖閣諸島の「領有権」について独自の主張を始めたのです。
 2008年12月には中国公船2隻が尖閣諸島周辺の日本の領海内に初めて侵入、2010年9月には中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突、2012年9月に日本が尖閣諸島のうち魚釣島・北小島・南小島を国有化してからは、中国公船は荒天の日を除きほぼ毎日接続水域に入域するようになり、毎月領海侵入を繰り返すようになっています。
 日本は尖閣諸島について「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らか。したがって尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題は存在しない」という姿勢を一貫してきました。しかし現実として今日も中国の挑発は続いており、尖閣諸島を不法占拠する事態への備えは不可欠です。防衛省・自衛隊は冷戦下の北方対策から南西シフトへとすでに大きく舵を切っていますが、さらに島しょ防衛を意識した体制を進めています。
 島しょを占領された場合の奪還シナリオは「海上自衛隊の艦艇により島まで数キロの沿岸まで輸送された陸上自衛隊の水陸機動団が速やかに水陸両用車で上陸、オスプレイやヘリ部隊が続く。さらに全国各地の機動師団・旅団も島しょ部へ急速に機動展開、空自による航空攻撃と海自護衛艦による艦砲射撃が上陸部隊を掩護」というものです。
 これを実現させるため、中期防では「平素の部隊配置」、「機動展開」及び「奪回」の3つの段階を実効性あるものとすべく、各種取り組みについて示しました。次週はそのうち2015年の新規事業についてご説明します。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)8月6日配信)