2015年陸海空自衛隊の装備と運用(2)

2015年度の防衛予算に含まれる新規事業を中心に、2015年の陸海空自衛隊の装備と運用についてご紹介する第2回目です。
先週は、領空の常設監視をさらに強化するために早期警戒機E-2Dと滞空型無人機グローバルホークを取得したことまでお話しました。
 早期警戒機を運用している警戒航空隊は、1つの部隊が2つの機種を3つの基地で運用するという稀有な部隊であり、早期警戒管制機E-767、通称AWACSを浜松基地に、早期警戒機E-2Cを三沢基地及び那覇基地にそれぞれ配備しています。
もとは浜松と三沢だけでしたが、ここ数年は尖閣諸島周辺の早期警戒監視のため三沢基地から那覇基地への展開が常態化、無理のある運用が続いていました。そこで昨年4月に部隊を改編、飛行警戒監視群と第601飛行隊(三沢)、第603飛行隊(那覇)を新編し、那覇基地でE-2C 4機の運用が始まりました。
 また、浜松基地でAWACSを運用する飛行警戒管制隊については、第602飛行隊と改称されました。三沢の部隊を2つに分ける形で部隊が新編されたおかげで、早期警戒機のイレギュラーともいえる運用は解消されました。新たに導入されるE-2Dは三沢に配置される予定です。
 広域における常続監視能力の強化のために取得した滞空型無人機グローバルホークは、昨年から米空軍が三沢基地で運用しています。本来の拠点はグアムのアンダーセン空軍基地なのですが、現地が台風などの気象条件により運用に制約を受ける5~10月の間は、毎年三沢基地に展開することになっているのです。
 自衛隊も同機を導入後は三沢に配備しますが、部隊は陸海空3自衛隊の共同部隊となります。
 無人機ですが地上での操縦はパイロットである米空軍にならい、自衛隊でもグローバルホークの操縦は航空自衛隊のパイロットから選抜、米国で訓練を行ない操縦資格を取得することになります。グローバルホークを運用する部隊は2018年までに新設されます。
 このほか、複数のヘリとの連携により敵潜水艦を探知するマルチスタティック能力等を付与した哨戒ヘリの開発がスタートします。試作総経費481億円のうち70億円を概算要求、機体は現有のSH-60K哨戒ヘリを使用することでコスト削減を図ります。今後5年間で開発試作、その後2年かけて性能確認試験を行なう計画となっています。
 三菱重工業に研究開発を委託している先進技術実証機は、来月に機体が公開される予定で、その後、ステルス性、高運動性等について検証することになっています。ステルス性と高い運動性能を備えた第5世代のステルス戦闘機は各国が開発を進めており、中国は数年以内に配備されるとされているJ-20のほか、J-31も昨年12月にテスト飛行する姿を初公開しました。
 ロシアのT-50は2016年に部隊配備予定とされています。韓国はインドネシアと4.5世代機KF-Xを共同開発、インドはロシアとT-50の共同開発に加え、中型第5世代機AMCAを開発中です。
 一方、空自が現在保有する戦闘機は第4世代のF-15とF-2、第3世代のF-4であり、ステルス戦闘機は存在しません。導入の決まった第5世代のF-35Aが初めて保有するステルス機となり、退役の迫っているF-4と置き換わります。
 F-2の後継機については国際共同開発と国産機のどちらにするか、2018年までに最終判断するとしています。実証機の検証結果次第では、F-2の後継機が国産ステルス機になる可能性もあり、防衛省が提唱しているカウンターステルス能力の高いi3FIGHTER(アイ・ファイター)の実現に一歩近づくことになります。
 i3FIGHTERとは「高度に情報(Informed)化/知能(Intelligent)化され、瞬時(Instantaneous)に敵をたたく」戦闘機。ステルスと機動性の両立と先進的なアビオニクスを備えている第5世代戦闘機のさらに先を行く、カウンターステルス、情報・知能化、瞬間撃破力、外部センサー連携能力を備えた第6世代戦闘機を目指すものです。
 次回は島しょ部に対する攻撃への対応について(のさわり)です。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)7月30日配信)