2015年陸海空自衛隊の装備と運用(1)

ちょっと固い内容になりますが、今年のはじめに雑誌に掲載した「2015年陸海空自衛隊の装備と運用」という記事を、一部リライトしてお送りします。
 2015年も7か月を過ぎたこの時点でなぜ今年の装備と運用についてわざわざ語るかと言えば、それはちょうど平成27年度版防衛白書も閣議決定されたし、安保法案を巡る世論の稚拙さにもがっくりしているからです。なんだかPKO法案成立のことを思い出します。社会党が牛歩戦術してましたよね。
ちょうど今日、こんなおもしろいまとめサイトを見つけました。安保法案をマンガ「るろうに剣心」で説明したものなのですが、よくできていてわかりやすいです。「るろうに剣心」をご存じの方は、さらに「なるほど、そうそう」と思えるのでは。ご参考までにURLはこちら。
安保法案をわかりやすく『るろ剣』で例えてみた
 さて、本題に入りましょう。
 2013年12月に閣議決定された防衛大綱と中期防衛力整備計画に基づき、2015年度の防衛予算は過去最大の5兆円を計上した防衛省。その予算の内訳からは、対中シフトの色がはっきり見て取れます。
 「統合機動防衛力の構築に向け防衛力整備を実施する」という主題は2014年度予算と同じですが、新たに導入する装備品がことごとく南西地域・島しょ部の防衛強化に関わっており、新編・改編される部隊についても同様です。
そこで予算に含まれる新規事業を中心に、2015年の陸海空自衛隊の装備と運用についてまとめてみることにします。
 まずは領海、領空を守るための新装備からです。
 新装備が必要な背景として、2014年に日本周辺の海域と空域がどのような状況にあったか、おもな事案を振り返ってみます。
 海域については、中国の領海侵入は32日に及びました。そのほとんどは南西諸島に集中しています。今も毎日のように領海侵犯を繰り返していますね。
 日本が同じことをしたら、中国が間違いなく武力でもって排除しようとするでしょう。しかしそれは中国に限ったことではなく、ソ連は民間人の乗っている大韓航空機だって領空侵犯を理由に撃墜しました。領空・領海を侵すというのはそれだけ相手の国に脅威を与えることであり、その国から攻撃されてもおかしくない行為です。
 また、昨年は9月から小笠原諸島周辺海域等で中国サンゴ船による密漁が連日のように行なわれたりもしました。
 空域については、5月と6月に航空自衛隊のYS-11EB及び海上自衛隊のOP-3が、中国軍のSu-27戦闘機2機から4回にわたり異常接近を受けるという事案が発生しました。
 そのうち一度は自衛隊機に下方から接近し、急上昇して前方に出た際、乱気流を起こして自衛隊機の飛行を妨害するという危険行為を行なっています。「そういえばそんなことあった」と、思い出された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 統合幕僚監部発表による2014年度のスクランブルは943回で、1958年に空自が対領空侵犯措置を開始して以来、57年間で2番目に多い回数でした。
 その内訳はロシア機約50%、中国機約49%、その他約1%。
 ロシア機に対する緊急発進回数は473回で、前年度に比べて114回の大幅な増加となりました。対象は情報収集機が中心で日本列島を一周する飛行も目立ち、このうち36件については「特異な飛行」として公表しました。
 中国機に対する緊急発進回数は464回で、前年度から49回増加。対象は戦闘機が多く、尖閣諸島北方の東シナ海への飛来が中心です。中国機については15件の事例について「特異な飛行」として公表しました。
 このような不安定要素を抱えた広域を常続監視し、さまざまな兆候を早期に態勢を強化するために取得したのが、早期警戒機と滞在型無人機です。
 昨年11月、早期警戒機はE-2D、滞空型無人機はグローバルホークに決定しました。いずれも米国政府提案の機種です。E-2Dは現在空自が保有している早期警戒機E-2Cの後継機に当たり、老朽化の進んだE-2Cに代わって2018年度までに4機導入される予定です。
次回も引き続き領海、領空を守るための新装備とそれを運用する部隊についてです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)7月23日配信)