飛行管理隊/飛行情報隊(7)

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オリンピックと自衛隊

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オリンピックに熱い思いを抱く、すべての人に捧げます。

自衛隊家族会発行「おやばと」、「隊友」160715号、 「月刊モデルグラフィックス」2016/8号「月刊丸」2016/8号160712「防人の道 NEXT」「歴史群像」8月号(学研)160701 桜林美佐の国防ニュース最前線、「月刊世界の艦船」2016/9号、160809 政治学者・岩田温の備忘録 で取り上げられました。





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飛行管理隊/飛行情報隊(7)

 航空機が安全に飛行するため、必要に応じて発行されるノータム。前回はノータムにはどんなものがあるか、そして自衛隊が発行するすべてのノータムの審査・指導を行なっているのが飛行情報隊だということをご紹介しました。
飛行情報隊がチェックするノータムは、1日平均300件とかなりの数。空港の工事やメンテナンスは夜間が多いので、ノータムは夕方に集中します。取材時、ノータムセンターの壁に貼られていたノータム取扱実績によれば、2011年3月のノータムは陸海空自衛隊と国交省の発行合わせて8367件。同年11月の5593件と比較すると、東日本大震災の影響により、ノータムが相次いで発行されたことがわかります。

 

 飛行情報隊のある府中基地の建物は、戦後進駐軍が建てた年代物。東日本大震災での震度5弱の揺れは、実際には「建物が倒壊するかと思った」と隊員たちが青くなるほどの激しい揺れだったそうです。
壁の一部がパラパラとはげ落ち余震が続く中、松島基地から電話がありました。津波の被害を受け28機あった航空機全機が水没した基地です。
「間もなく松島基地に津波が来ます。端末が壊れてノータムを発行できません、そちらで代替発行をお願いします。われわれはこれから避難します」

 

 誰も経験したことのない未曾有の状況。
確かにノータムの代替発行は飛行情報隊の任務のひとつではありますが、松島基地からの命がけの電話も、その内容も、それを受けて冷静にノータムを発行した飛行情報隊も、自衛隊員が入隊時に宣誓する「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め」そのものです。
結局、松島基地の端末が復旧するまで、飛行情報隊は約30通のノータムを代替発行しました。

 

 少し話がそれますが、津波に襲われた松島基地についても触れさせてください。
当時、松島基地には飛べる状態の航空機18機と故障や整備中の10機がありました。震災当日の午後は天候不順のため午後の訓練が中止、地震が発生したときはすべての航空機が基地にある状態でした。
1446に地震が発生、1510には松島基地周辺に大津波が到達するとの警報を入手した基地司令は、地震発生から約10分後に全隊員へ屋上への退避を指示したといいます。結果的に津波の到達は地震発生から約1時間後だったため、「隊員の退避が早すぎたから航空機を空中退避させられなかった」という非難の声が一部に挙がりました。

 

 自衛隊はこういうときにあまり弁明しないので歯がゆいのですが、ハンガーに格納されている航空機や故障中・整備中の航空機を1時間以内に飛ばすのは物理的に不可能です。
格納作業中だった航空機でも、改めて飛行前点検を行ない、かつ、これほどの揺れの後ですから滑走路や誘導路の目視による安全確認が必要です。さらに第1回にも書きましたが、航空機の飛行にはかならず飛行計画書の提出が必要です。
これらすべてを行なうには最短で約40分かかるそうです。しかも当日は訓練が中止になったほどの天候不良でした。

 

 「スクランブルは5分で上がってるじゃないか」という声もありました。
スクランブル待機している航空機はあらかじめすべての点検や準備が整っており、航空機もパイロットも「いつでも飛べます」という状態で待機しているからこそ5分で上がれるのです。あまりに非現実的なコメントです。

 

 つまり、1510頃に大津波が押し寄せるという情報を入手した時点で、航空機の空中待機という選択はありえませんでした。津波が予想より遅れてくるかもという希望的観測で、千数百人の隊員の命を危険にさらすわけにはいきません。

 

 目の前で津波に流されていくF-2を見ていた隊員たちは、北風の吹き付ける屋上でなにを思っていたのでしょう。ノータムの代替発行を電話で頼んできた隊員は、どんな思いで避難したのでしょう。
松島基地をベースとしているブルーインパルスが、九州新幹線開通イベントで展示飛行するため松島基地にいなかったことが、唯一明るいニュースでした。

 

 次回は飛行管理隊/飛行情報隊の最終回です。

 

 

 

 

(わたなべ・ようこ)

 

(平成27年(西暦2015年)7月9日配信)

 





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