飛行管理隊/飛行情報隊(5)

飛行管理班の運用主任は運用現場の指揮・監督をし、運用室でFADPに関わる隊員の連携を取る役目も果たしています。
運用主任を務める2等空曹によると、ただFADPで情報を送るのではなく、「この部隊はこういう仕事をしているからこの情報を送る」といった具合に、送り先が何をしている部隊や機関なのかをしっかり把握している必要があるそうです。先々週、FADPが繋がる組織がどれほど多いかご紹介しましたが、それらすべての業務内容を理解していなければならないそう。連接している組織を把握することなくただ情報を流していては、不測の事態が起こったときの対応が十分なものにならない可能性もあるからです。
 システム室には中央処理装置、外部システム連接用通信機器、システム監視コンソールなどが配置されており、電子計算機班が常駐し、機器の管理をしています。
電子計算機班の運用係長である2等空曹は、FADPシステムのホストの操作に関わっています。今までに一度だけ、1日半ほどFADPによるデータのやりとりができなくなってしまったというトラブルに遭遇したことがあったそう。そのときは国交省からの情報を印刷し、それを手に各防空指令所に電話で伝達したとのこと。班員みな総動員で、誰もが電話をかけっぱなし、しゃべりっぱなし状態。一度システムが障害を起こすとこれだけ大変なことになるのだと痛感したそうです。
 ところでFADPは、そのシステム単体ではその役割を果たしません。ほかのシステムと連接することで初めて役立つものであり、そのために不可欠な存在が有線整備員です。
整備班に所属する隊員にとって、数年に一度行なわれるFADPの換装は大仕事。近年はDII(防衛情報通信基盤)が整備されたので大分回線が少なり、障害も減ったし作業自体も少し楽になりました。以前は光通信もなく1本ずつ繋げていたため、とんでもない量の配線だったとか。
 さらに、FADPの運用は基地内で自己完結できるようになっています。
停電時には電源倉庫の発動発電機2基で電力を確保、これが立ち上がってから電流が安定するまでの最初の1~2分間は、150個のバッテリーで発電します。発電機を動かすための軽油も地下タンクに保存されています。
 飛行管理隊の各班をひととおり見たところで、入間基地の管制塔に上がり、FADPが管制官へどのような情報を提供しているのか実際に見てみましょう。
 管制塔にはストリップと呼ばれる細長い紙が不定期に出力されています。ペラペラの紙で、サイズは文庫本に付いているしおりと長さはほぼ同じ、幅は半分程度といったところ。ゴミと間違えられ捨てられてしまいそうな感じです。
けれどこのストリップこそ、FADPが管制塔に送ってきた情報が集約されたもの。出発する航空機の識別符号、型式、巡航高度、目的飛行場、飛行経路の概要、出発予定時刻が記載されています。
 管制官はこの情報を使って国交省などから管制承認をもらい、航空機を離発着させます。
細長い形状なのは、管制官にとってはこの形がもっとも使い勝手がいいから。FADPは必要とする情報を選び出して渡すだけでなく、相手のニーズによってアウトプットの方法を変えることができるのです。こうやって細長い紙であったり、大きな用紙であったり、あるいは印刷せず画面上に表示するとか。その点もFADPのすごいところです。
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)6月18日配信)