飛行管理隊/飛行情報隊(4)

前回に続き、今回も飛行管理隊の業務内容を見ていきます。
 飛行管理隊の任務のひとつに「運航情報業務の実施」というものがありましたが、正確には「飛行管理中枢における運航情報業務の実施」となります。飛行管理中枢とは、「担当区域の運航情報およびノータムの収集、処理、飛行監視、通信捜索等の業務を実施するための施設、装備、機能及び人員の総体」を指します。飛行管理隊では飛行管理班がこれに当たります。
 入間発千歳行き自衛隊IFR機のフライトを例に、飛行管理中枢においてFADPがどのように活躍しているのか見てみます。
まず、出発地である入間基地の飛行場勤務隊に飛行計画書が提出されると、FADPを通じて入間と千歳の飛行管理中枢、千歳基地業務隊、国交省の飛行情報管理システム・FDMSへ通報されます。
FDMSはその情報を東京と札幌のACC(航空交通管制部)へ送り、さらに東京ACCから横田ターミナルレーダー管制所へと通報されます。
 一方、FDMSからは、航空管制情報がFADP経由で入間、千歳の管制機関へ送られます。
 このように、たった1つのフライトでもこれだけ多くの機関が関わっています。
そのすべてを繋ぎ、情報を発信・受信、共有できるシステムがFADPであり、今やFADPなしに自衛隊機が日本の上空を安全に飛ぶことは不可能です。
 それだけに、FADPに障害が発生すると大変な事態になることは容易に想像できます。
平成15年に国交省のFDMSを構成するFDPS(飛行管理情報システム)で障害が発生した際は、約20分間、全国の空港から航空機が出発できなくなりました。
その結果120便が欠航、30分以上の遅延1462便、約30万人の利用者に影響を与えるという大きな混乱をもたらしました。
 FADPもひとたびトラブルに見舞われれば、スクランブルがかかっても戦闘機が飛び立てない事態もありえます。
そのため、通常は入間に飛行計画情報処理装置(メインとなる運用系と予備の待機系)、春日に支援処理装置(実習や試験用の支援系と予備の準備系)で運用し、万が一入間の運用系にトラブルが発生し、待機系も使えないとなった場合は、春日の準備系を運用、支援系は待機に回ることとしています。このように分散運用することで、一局集中リスクを避けているわけです。
 飛行管理隊にあるFADPの運用室やシステム室に休みはありません。24時間365日、かならず隊員がいます。
運用室もシステム室もゆとりある配置になっているのは、FADPの機器が換装してバージョンアップするたびにコンパクトになっていったから。かつてはどちらの部屋も機器でぎゅうぎゅうだったそうです。
 運用室にはFADPの端末と運用主任席、通信席、FS席、AMIS席などが並び、運行情報業務や航空機移動情報業務を行なっています。次回は飛行管理隊の隊員たちの仕事ぶりをご紹介します。
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)6月11日配信)