飛行管理隊/飛行情報隊(3)

前回は防衛省独自の飛行管理情報処理システム、FADPをご紹介しました。
 FADPを運用しているのが飛行管理隊、自衛隊の発行するすべてのノータムに目を通し、不備がないかチェックするのが飛行情報隊。いずれも航空支援集団の航空保安管制群に属しています。けれど、地味で目立たず、自衛官ですらその存在はあまりなじみがありません。
 ちなみにFADPにつながる組織をざっと挙げてみると、まず警戒管制、指揮運用、航空管制、洋上管制、航空気象、空輸管理・訓練管理などの組織のシステム。飛行管理系ではノータム処理装置、陸上自衛隊のターミナルレーダー情報処理システム、海上自衛隊と航空自衛隊の基地業務隊、在日米軍の基地業務隊など。さらに国交省のFDMS。すごい数です。
 FADPを中心に置き、オンラインネットワークでつながっている関係機関を周囲に並べた図を描いてみると、FADPがどれほど重要な役割を果たしているシステムであるか、そしてどれほど多くの部隊や組織とつながっているのかよくわかります。FADPなくして日本の空の安全と平和を守ることは不可能と言っても過言ではありません。
 それなのに飛行管理隊も飛行情報隊も目立たない……ノータムや飛行計画書がどんな部隊のどんなシステムを経由して必要とするところへ発信されているのか、提出した隊員も案外知らないものなのです。
 しかし認知度は低いとはいえ装備や技術の質は高く、隊員たちは「自分たちはFADP、ノータムに直接関わる唯一の部隊」という静かな誇りを抱いています。頼もしいです。
 日本の上空への不法な航空機の侵入を防ぎ、空の安全を守る航空自衛隊の任務をまっとうするためには、空を飛び交う航空機の正確な情報が不可欠です。
 飛行管理、航空警戒管制、航空管制、捜索救難といった関係部隊が必要とする情報量は増え続ける一方で、今までにも増して迅速、的確な処理が求められています。そのためにFADPがどのように運用されているのか、ノータムがどのように発行されているのか、それぞれの部隊の内側に踏み込んで見てみることにします。
 まずはFADPを運用する自衛隊唯一の部隊である飛行管理隊から。
 埼玉県の入間基地にある飛行管理隊。昭和35年に米軍から移管された当時は、電信で飛行計画書を送り、音声でやりとりしていたといいます。しかし昭和46年に全日空機と空自戦闘機の空中衝突事故、いわゆる雫石事故が発生したことを機に、国交省は全国のIFR(計器飛行)機の情報を取り扱うFDP(現在のFDMS)の導入を決定。防衛省側も昭和53年にFADP初号機の運用が始まりました。これにより、飛行管理業務の自動化、航空管制および空域調整への対応がスタート。FADPは数年おきに換装されており、現在のFADPは7代目となります。
 飛行管理隊の任務はFADPの運用、運航情報業務の実施、ノータム通信中継業務の実施、保有危機の保守および整備(FADPの保守は部外)となります。
 FADPの運用という部分は、自衛隊機等の飛行計画の点検、飛行監視、通信捜索等の実施など、自衛隊機等の安全かつ円滑な運航を支援するFS(運航情報業務)と、防空識別圏を飛行する航空機の飛行計画及び位置通報を警戒管制部隊に通報し、敵と味方を識別する支援を行なうAMIS(航空機移動情報業務)にわけられます。FSとAMISという2つを実施するためのシステムがFADPであることは前回もご紹介した通りです。
 正確性、迅速性、確実性が求められる飛行管理隊の業務。次回もさらに詳しく見て行きます。
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)6月4日配信)