飛行管理隊/飛行情報隊(2)

先週は、航空機を安全に運航させるためにはネットワークを通じて多数の機関が情報を共有する必要があること、その情報は国土交通省の飛行情報管理システム、FDMSから提供されることをご紹介しました。今回はいよいよ飛行管理隊の登場です。
自衛隊の航空機も日本の上空を飛んでいる以上フライトプランは提出するし、ノータムも発行します(先週の繰り返しになりますが、ノータムとは航空機が安全に運航するために出される情報のこと。「東京湾で花火大会がある」とか「除雪が間に合わず滑走路が閉鎖」といった情報がノータムで、その事象が発生する飛行場等から発出されます)。
 訓練する場合も、あらかじめ報告してある訓練空域内で行なわなければなりません。輸送機にしても、定められた空の道路から外れずに飛んでいます。
 ただ、航空路管制業務が国交省の仕事なら、航空自衛隊は航空警戒管制業務が仕事。
「防空」という任務のため、国交省のFDMSではなく自衛隊独自のシステムによって、自衛隊機の飛行情報を関係機関に発信しています。それがFADP(ファダップ)と呼ばれる飛行管理情報処理システムです。
 FDMSから届く情報を業務に合わせた形で運用するため、航空会社や関係省庁はそれぞれ独自のシステムを持っています。それが防衛省の場合はFADPというわけです(ちなみに気象庁ではADESSというシステムを使っています)。
 FADPには、ノータムを処理する能力や、運航情報を管制機関に提供する航空交通管制情報処理機能があります。また、各航空機の出発時刻と到着時刻を監視し、予定時刻までに到着しない場合は通信捜索報を関係機関に出力する運航情報処理機能も持っています。これらはFS(運航情報業務)と呼ばれ、多少の違いはあれど、国交省のFDMSにも備わっている機能です。防空に特化した機能ではないということですね。
 FADPならではの機能はここからです。航空警戒管制部隊が必要とする国籍不明機などの情報を提供する防空識別情報処理機能、訓練空域を通過する民間機の運航情報を航空警戒管制部隊に提供する空域調整情報処理機能。
これらの機能はAMIS(航空機移動情報業務)と呼ばれ、防空の色合いが強くなります。このFSとAMISという飛行管理業務を実施するためのシステムがFADPというわけです。
 さらに言えば、FADPは国交省の管制システムと航空自衛隊の航空警戒管制システムの間に立ち、通訳の役目も果たしています。FDMSからの情報はFADPを経由することで「民間語」から「自衛隊語」へ訳され、適切な形で必要な場所へと送られるのです。
 この大切なシステムを運用しているのが飛行管理隊で、自衛隊の発行するすべてのノータムに目を通し、不備がないかチェックするのが飛行情報隊です。最後にようやく部隊名が登場しました。
 今回の重要ワードは「FADP」でした。自衛隊機の運航に不可欠な飛行管理情報処理システムです。
 次回は陸海空自衛隊の中でFADPを運用する唯一の部隊である、飛行管理隊の業務についてご紹介します。
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)5月28日配信)
商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。お買い物される際には、必ず商品ページの情報を確認いただきますようお願いいたします。また商品ページが削除された場合は、「最新の情報が表示できませんでした」と表示されます。