陸上自衛隊女性自衛官教育隊(6)

引き続き女性自衛官候補生へのインタビューです。
駐屯地や基地が数多くあるため、自衛隊に関わる人口も多い青森県出身のBさんは、もともと大学卒業後は民間企業に勤めるつもりで就職活動を行っていたそう。
「それが企業説明会に行ったときに自衛隊のブースがあって、なにげなく話を聞いてみたら興味を持ったというのがきっかけです。青森県は自衛隊が多いですが、たまたま私の周囲には自衛官がいなかったので、まったくの未知の世界。運動神経がいいわけでもなく体力があるわけでもなく、それでも自己完結できる世界であること、社会貢献できることに魅力を感じました」
筆記試験はスムーズにクリアできたものの、華奢な体は身体検査で体重が規定ぎりぎり。
検査前は「水をがぶ飲みし、口を押さえながら体重計に乗りました(笑)」。
晴れて入隊後は、もともと食事に1時間かかっていたというのんびりキャラを返上し、同期たちに迷惑をかけないよう必死だったとか。
それでも親元を離れ、見知らぬ土地での団体生活は苦労以上に刺激のほうが大きく楽しいというから、なかなか肝が据わっています。
「入隊したらきついだろうと覚悟していたので、こんなはずじゃなかったという理想と現実とのギャップは特になかったです。運動の経験があまりなかったので最初は体力面が不安でしたが、今は随分体が慣れました。同期は年下が多いけれど、のんびりした私を気遣ってくれたり励ましてくれたり(笑)。年下というよりも同期の仲間という意識のほうが強いですね。目指す自衛官像は、辛い時もその思いを顔に出さず職務を遂行できる、そんな自衛官です。職種では通信に進めたらと思っています」
Cさんは、高校在学中から「自衛隊の衛生科に進みたい」という具体的な目標を持っていたそうです。
陸上自衛官の父親の姿を見て育ったこと、その父親と一緒に音楽まつりなどのイベントに行き、自衛隊に親しみを抱いていたことから、自衛隊を進路に選ぶことは自然な流れでした。ちなみに2歳年上の兄も、一足先に一般曹候補生として入隊している陸上自衛官。
「衛生科に進みたいというのは、人を助けることに直結している職種だからです。准看護師や救急救命士の資格を取得すればできることもさらに広がりますから、それらの資格を得て、その技術を自衛官として役立てたいです。最初からそういう思いを持っていたので、任期制自衛官ではなく陸曹へと進める一般曹候補生を選びました。入隊後はアイロンがけの細かさなどに驚いたり、体力的にきついこともありますが、同期の仲間がいるから一緒に頑張れます。仲間の力って本当に大きいですね。励まし合い、支え合うことの大切さを思い、仲間に感謝する毎日です。それから班長達のかっこよさにも毎日しびれてます(笑)。班長達のように、いつか尊敬される陸曹になれたらいいなと思います」
Cさんの実家は埼玉県なので、遠方から朝霞にやってきた候補生と違って休日は実家に戻り両親に会えるという恵まれた環境です。
そんな彼女に初任給の使い道を尋ねたところ、「家族に食事をごちそうしました」。
余談ですが……
実はこのインタビューの際、なんとCさんと私が親類であることが判明! 私達も周囲の人もびっくりです。
父親の陸上自衛官は私の従兄、その娘だったのです。従兄との付き合いはありましたが、Cさんに会ったのはまだ小学生にもならない小さな時が最後、後は年賀状の写真で「大きくなったね」と見ているだけでしたから、驚いたのなんの。
この時の記事が掲載された雑誌を従兄が購入、いずれも入院中の両親(私の伯父、伯母)に見せたところ、とても喜んでくれたそうです。伯父には小さい頃随分可愛がってもらったので、少しは親戚孝行ができたようでうれしかったです。私事ですみません。
次週は女性自衛官教育隊連載の最終回です。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)3月26日配信)