陸自の演習場整備(3)

先週、コラムの最後に整備期間中の1日の流れをざっくりとご紹介しましたが、1700の終礼後の過ごし方に夕食や入浴のほか、「零細時間を活用した訓練等」とありました。
この訓練は各中隊で計画し、格闘訓練やARM‘S訓練等が中心ですが、WAPC(96式装輪装甲車)の操縦訓練、距離判定訓練等が行なわれることもあり、連隊長の意向がかなり反映されます。ただしあくまでも演習場整備が最優先事項なので、訓練が実施される場合もおそらく隊員たちに負荷がかかりすぎない計画となっているでしょう。ちなみに令和4年度春季演習場定期整備の際には、最後に整備が完了したばかりの射撃訓練場においてWAPCの76ミリ発煙弾発射機による発煙弾射撃及び手りゅう弾投てき訓練という連隊射撃訓練を実施したそうです。

また、零細時間は部下の心情把握ができる貴重な時間でもあるため、幹部が曹士の部下とコミュニケーションを図ったり(死語になりつつありますが要は飲ミュニケーションですね)、階級ごとに集まり各種問題点を話し合ったりすることもあります。数年前には、幹部が部隊を指揮する上で身につけているべき常識等の試験を行なったこともあったといいます。

課業開始時と終了時には駐屯地と同様、らっぱ吹奏に合わせ国旗を掲揚降下します。
宿営地は演習場外の鬼志別地区にあり、かまぼこ型の隊舎が並びます。見るからに「え、使ってるの? 使えるの?」という年代物ですが、実際老朽化が進み、中には床が抜けたり天井の一部が崩れ落ちたりと使用できないものも。使用している隊舎も危険ではと心配になります。

隊舎に収容できない部隊は6人用天幕を利用します。
天幕の上に積雪寒冷地ならではの偽装用の白色布を屋根のように張っているのは防寒のためで、この1枚があるだけで天幕内のストーブで暖まった空気が逃げず、雪が降った場合も天幕に直接積もらないので寒さが防げるそうです。案内してくれた広報担当者によると、白色布1枚で寒さが「まったく違います」とのことだったのであなどれないですね。
一方、対面の天幕にはこの布が張られていません。そちらの中隊(または小隊)はこの防寒効果を知らないのか、あるいは知っていてもあえて張らなかったのか、その辺りは不明です。

浴場はあるもののかなり狭く一度に入れる人数が限られているため、後方支援部隊から入浴場の開設支援を受けます。
この野外入浴セットは災害派遣等でも活躍しているものです。お湯の温度は43度に設定されており少々熱いのではと思いますが、追い炊き機能がないので最初は熱めくらいでちょうどいいのだとか。隊員たちには古くて狭い浴場よりシャワーも10台あり一度に25名ほど利用できる野外入浴セットのほうが人気で、入浴時間は部隊ごとに決められていますが、それでも混雑時にはマイシャンプーセットを抱えた隊員たちが行列を作って「風呂待ち」をします。なかなかレアな光景です。

(つづく)

(わたなべ・ようこ)