陸自の演習場整備(1)

毎年、春・秋の年に2回実施されている陸自の演習場整備。演習場に泊まり込み数100名単位で10日前後かけて行なう大がかりなものですが、その詳細はほとんど知られていません。
今回は日本最北の演習場である鬼志別演習場整備を取材、草刈り機を手にしてミリミリの整備を行なう隊員たちの姿を追いました。

陸上自衛隊が演習や訓練で使う演習場は全国に点在していますが、等しく春秋の年2回、演習場整備が実施されています。
どの部隊がどの演習場の整備を担当するかは決まっており、大規模かつ長期間の訓練や災害派遣などがない限り、演習場整備は部隊の年間計画に組み込まれています。
小銃ではなく草刈り機を手に除草に励む姿は取材される機会も皆無に等しいため、演習場整備の目的や詳細はほとんど知られていません。
今回、日本最北端の演習場である北海道の鬼志別演習場の令和5年度秋季演習場整備を取材する機会を得たため、その一部をご紹介します。

鬼志別演習場の所在する宗谷郡猿払村(さるふつむら)は北海道最北、かつ村としては道内一の広さを誇る村であり(ぜひgoogle mapなどで場所をご確認ください。本当に最北です)、稚内空港から車で約90分の距離です。猿払村の東はオホーツク海の海岸線、西は丘陵性山地を境に豊富町、南は幌延町、浜頓別町、北は稚内市に隣接しています。
人口は約2760人、天然ほたて貝の水揚げ量は日本一を誇ります。
村の中に点在している立派な家は「ほたて御殿」でしょうが、取材時は水揚げ時期ではなく、中国が日本の海産物の輸入を停止していたことも影響していたのか、村の中心部をのぞいて人の姿を見かけることもまれでした。飲食店もほとんど閉まっていて、夜に飲むとしたら宿泊先のホテルの20時まで営業しているレストランのみ。村の中心部に隣接した演習場とは思えない、閑散とした光景でした。
一方、釣り人の憧れであるイトウが生息する川やライダーに人気の北に約4キロ、南に約8キロのガードレールや電柱が一切ない直線道路など、旅行者にも親しまれています。

鬼志別演習場は1965年に開設、訓練等で利用されてきました。
演習場整備の参加部隊は名寄駐屯地所在の第3即応機動連隊ならびに第2偵察隊が中心で、ほか旭川駐屯地所在の第2師団隷下の第2後方支援連隊第2整備大隊や第2施設大隊の支援を受けて実施します。
道内の北海道大演習場や矢臼別演習場のような大規模演習場ではなく、第3即応機動連隊ならびに第2偵察隊が実射を伴う訓練をする際は上富良野演習場を利用することがほとんどのため、使用頻度はさほど高くない演習場ではあります。

名寄駐屯地は第一線級の戦闘部隊が配置された駐屯地としては日本最北に位置し、2022年3月に第3普通科連隊が第3即応機動連隊へと改編され、全国で5番目の即応機動連隊となりました。
3連隊時代から「朔北部隊」として精強と名高かった部隊は、現在16式機動戦闘車、通称MCVという新たな装備を備え、高い機動展開能力という特色を持つ部隊となっています。

(つづく)