第2師団冬季戦技競技会(6)
先週、冬季戦技競技会の結果が3即機の総合優勝で、スキーの機動能力はほかの連隊もほぼ同じゆえ、射撃が勝負を分けたとお伝えしました。
3即機はARM‘S訓練と呼ばれる射撃訓練を2年前から重点的に実施しており、その成果が表れたともいえます。私も数回この訓練を取材していますが、訓練検閲の状況終了後間髪を入れずとか、厳冬の夜間とか、あえて隊員に負荷をかけて射撃訓練を行なっていました。隊員たちもつらかったと思います。けれど、取材を重ねるほど「ここは水陸機動団?」と思うほど、射撃の練度だけでなく隊員の射撃に対する「慣れ」を感じ、これこそ即機連のナンバー中隊の隊員ではないかと感嘆したのでした。
山崎3即機連隊長は完全優勝という結果に、「今年度は改編初年度でありながら大きな訓練に連隊全体で取り組んできたことから、特に夏場の基礎体力をあげるための訓練はほとんどできませんでした。そのような中、競技会に臨んだ隊員たちは土日や冬季休暇も練成に励み、その他の隊員はさまざまな形でバックアップしてくれました。連隊一丸となって勝ち取った優勝であり、本当に嬉しく誇らしく思います」と語りました。
この取材で、第2師団冬季戦技競技会が「冬季の作戦行動に直結する戦闘戦技能力の向上を図るとともに、部隊の士気の高揚及び団結の強化を図る」という目的にそったものであることはよく理解できました。
地元との確かな信頼関係が構築されていることも一目瞭然でした。そして何よりも、積雪寒冷地部隊の隊員たちの精強さを改めて認識する機会となりました。
ただ滑れればいいわけではありません。ワックスの選択、新雪の進み方、スキーをはいたままの射撃、効率的なアキオの曳行など、すべて各部隊がこれまで積み重ねてきた練成で導き出した最適解であり、一朝一夕に習得できるものではありません。競技会における隊員たちのモチベーションは非常に高く、「スキーがなければ戦えない部隊でこれだけスキーを扱える」という自負も感じられました。
積雪は敵の侵攻を防ぐ天然の要塞であす。車両は除雪なしに1mたりとも進むことはできません。なすすべもなく立ち往生している敵の最新装備品に、「官品スキー」を自在にあやつる北鎮師団の隊員たちが音もなく忍び寄る……。敵にとってはとてつもない脅威です。
有事は季節も気象条件も選びません。ロシアの脅威も現実として存在しています。積雪寒冷地部隊におけるスキーは娯楽でも余興でもなく、ましてやごく一部の隊員のものだけでもなく、全隊員に必須のスキルなのです。「こういう競技会が本当に必要なの?」という自身が抱いていた疑問について、練成が部隊全体の練度の底上げにつながるだけでなく他部隊と実力を比較できるこの競技会は意義がある、というのが取材で導いた結論です。
第2師団の広報担当者によると、現在の自衛隊では、今や各種競技会だけに特化した隊員を抱える余裕はないという話でした。確かに、自衛官の充足率は定員割れです。万一わずかながら残っていたとしても、消えゆく存在でしょう。
ゴール後に倒れ込んだ隊員にも、目標タイムに届かず涙を流していた隊員にも、小さな体で懸命に進んでいた女性隊員にも、雪深い北方の地を守るすべての隊員に賛辞を送ります!
(おわり)