日本×統一朝鮮というシナリオ(7)
朝鮮半島を中立にしておきたい。かつ、アメリカ兵はひとりも傷つけたくない。そこで韓国軍は米軍の作戦指揮システムで縛り、北はベトナム化する。在韓米軍司令官は在日米軍司令官が兼任する形にして日本に下げる。そうやって朝鮮半島を緩衝材として中国とにらみ合うという構図が、アメリカの本音だと思います。
日本は日本で、わが国の領空、領海、領土を侵略させないことが重要なことは言うまでもありません。そのため、昔から朝鮮半島をその緩衝材として位置付けてきました。その朝鮮半島を抑えていたにも関わらず、帝国日本軍はさらに最前線を日本から離したいと考えた。それが満州国だったのです。
では、現代の自衛隊はどうすればいいのか? 海自は第7艦隊と一緒に動き、日本周辺の公海で敵を排除する。空自は米空軍の戦闘部隊とともに公海上の上空で敵を排除する。陸自は尖閣諸島防衛に注力する。つまり、今の防衛力整備や行なっている訓練こそが現実的な日本防衛の在りようであり、他国に日本を侵略しようとする気持ちを起こさせない抑止力として機能するということです。
今の憲法、今の日米関係がある限り、これ以外の道はなく、最善の方法でもあるのです。それを変えるならば米韓と同じように、日米合同防衛として完全に一体化するという選択になりますが、それができないなら今の形しかないのでしょう。
付け加えれば、海上から日本に接近させないようにするため日本に必要なこととしては、MDA(海洋状況把握)の機能をもっと向上させることが挙げられます。
ここまで見てきたように、統一朝鮮が日本を攻撃するというシナリオは非現実的と考えますが、頭の体操としてシミュレーションすることには意味があると思います。
特に、各国がどれくらいの兵力を保有しているのか、それに対して日本はどれほど対処する力があるのかといったことが明らかになりますし、各国の軍の組織、構造がわかれば、日本をめぐる安全保障環境への理解はより深まります。お互いの戦力や兵力差を視覚化するという視点からも必要なことでしょう。
空域防衛、弾道ミサイル防衛、海上防衛、陸上防衛、この4種類の作戦について、新たな分野である宇宙、サイバー、電磁波といったクロスドメインという概念も加味したシナリオをひとつずつ検証するとよいのではないでしょうか。各種の防衛作戦の検証はこの本の趣旨に合っていますし、「戦争は目的がないとやらない」ということが客観的に理解できると思います。その結果、「日本×統一朝鮮」という戦争が、実は「日本×中国」だという構図も見えてくることでしょう。
来週からは伊藤氏による「日本周辺国の軍事力状況」をご紹介します。
(日本×統一朝鮮というシナリオ おわり)