日本×統一朝鮮というシナリオ(6)

このように韓国も北朝鮮も、一国で日本に対して武力行使してくる蓋然性はきわめて低いと思います。
その上での頭の体操として、もし統一朝鮮ができたとして日本に武力行使する場合を考察するには、まず「その攻撃する目的は何か?」、そして「攻め込んだ後の日本」に対して「なにをしたいのか?」という、作戦目的やメリットを想定する必要があります。
統一朝鮮であろうが、北朝鮮一カ国であろうが、日本を攻撃する目的やメリットが見えてきません。それでもあるかとさらに思考を深めると、「中国という国の後ろ盾がいる」というシナリオならば、起こりえるのかもしれません。むしろ「中国の意思」で「統一朝鮮を動かして日本を攻撃する」というシナリオです。表面的に「日本×統一朝鮮」と見える戦いは、実は「日本×中国」だということです。

また、仮に統一朝鮮軍が誕生するとしたら、それは韓国の「赤化」にほかなりません。統一というより、韓国は北朝鮮に吸収される形になるでしょう(韓国はピンと来ていないかもしれませんが)。そして作戦支援システムを提供する中国が、統一朝鮮軍を手足のように使い自在に操るというシナリオです。

中国がそれを仕掛ける目的は、日本を中国の一部にする、あるいは属国化するという目的です。ただし、日本に日米同盟がある限り、中国はアメリカとは本格的な戦争はしたくないので、アメリカが出てこない程度に日本を痛めつけるという方法です。
しかし日本の本土を攻撃しておいてアメリカが出てこないなどありませんから、ミサイルで原発を狙うという大がかりなことはせず、どこの国の軍隊かわからない服装に身を包んだゲリコマによる原発攻撃を仕掛けるでしょう。
この段階では、他国からの武力行使というよりも犯罪の範疇になり、日本も警察機構が動きますからアメリカも手を出しづらい。それでも原発に大きなダメージを与えられた日本は大混乱しますから、そのバタバタに乗じて尖閣に上陸し実効支配するという構図です。

なんとも乱暴なやり方ですが、勝手な解釈で都合のいい国内法を制定し「中国は法治国家だ」と悪びれない国ですから、非現実的なシナリオに見えるものの、ありうるかもしれません。

ただ、統一朝鮮となった段階で、そもそも国際社会は黙っていないでしょう。
統一朝鮮軍が日本を攻めるより前に、統一朝鮮軍は朝鮮半島において国連軍と戦うことになるはずです。そしてアメリカは、中国により共産化された統一朝鮮を決して許さないでしょう。

アメリカが第二次大戦後に太平洋西部に配置した不後退防衛線「アチソンライン」は、共産主義を封じ込めるために考案されたものでした。ところが、そのラインが北朝鮮に「アメリカは朝鮮半島に介入しない」という誤ったメッセージを送ることに繋がり、朝鮮戦争勃発の要因になりました。
その失敗から学んだ現在のアメリカには、不後退防衛線への議論そのものがありません。代わりに朝鮮半島そのものにバッファゾーンを置くと考えるようになりました。それが在韓米軍です。その上で、米朝首脳会談を行ったトランプ政権は、北朝鮮をベトナム化しようとしているのではないかと私は見ています。
ベトナムは共産主義国家ですが、アメリカと友好関係にあり中国とは敵対しています。アメリカはおそらく北朝鮮をそういう存在にしたいのでしょう。

(つづく)