日本×統一朝鮮というシナリオ(1)
尖閣諸島をめぐって中国と日本が戦うというシナリオは、かなりリアルだと思います。なぜなら中国は尖閣を自国の一部と国内法で定め、国民もそう認識しているからです。
そこを詳しく話す前に、まず現代の戦争のありかたについて触れておきます。
今の時代は、どの国も勝手に戦争ができないようになりました。
国連憲章ができて以来、「宣戦布告」という用語はなくなりました。ましてや他国をいきなり攻撃したら国際法違反、戦争犯罪国家になります。さらに国連憲章は自衛権そのものも制限しています。
ではなにをもって各国や国際社会の安全を保障するかというと、国連憲章41条には、常任理事国を中心とした10カ国からなる安全保障理事会が、どの国のなにが悪いかを決め、制裁を科しながら悪い行動をやめさせると定められています。この段階では、経済制裁など平和的な解決を目指します。
それでもその悪い行動をやめない国がある場合、42条により、武力制裁決議をして、みんなでぶっ叩いてやめさせる。これが今、国際社会で唯一許される武力行使なのです。これを集団安全保障措置といいます(日本人はこれをよく集団的自衛権と混同します)。
不戦条約や国際連盟でも「戦争は悪であり犯罪である」と定義されましたが、「自衛のための戦争であると主張し、宣戦布告さえすれば戦争してもよい」と解釈されていたのです。よくいう「自衛の名を借りた戦争(自衛戦争)」です。
しかしふたつの世界大戦を経て、ついにこの自然権である自衛権そのものにも制限を加え、「自衛戦争」も絶対に許さないということになったのです。
そして51条では「個別であれ集団であれ、自然権である自衛権そのものを否定はしない」が、「ただし条件がある」と定めました。自衛権を発動して押し寄せる敵を排除してもよいが、ふたつの条件、ひとつは「国連安保理への報告」と、もうひとつはその自衛権発動可能な期間として「42条による武力制裁が始まる」までの間認められる行動と定義されたのです。
余談になりますが、第一次安倍総理内閣の際、日本国民向けのメッセージとして「戦後レジームを脱却し、集団的自衛権の議論をしたい」との発言が、世界では「とんでもないリビジョニスト(歴史修正主義者)の首相が現れた」と批判されたことを覚えていますか。当時のオバマ大統領は最初、安倍総理と口を利こうとしませんでした。
戦後レジームとは、国際社会では「集団安全保障体制」のことであり、42条にある「みんなで決めてみんなで叩く」というレジームです。けれど日本で安倍総理が使われた戦後レジームとは「アメリカの極東裁判によって書き換えられて以降の日本の歴史」のことです。ところがそれは世界では通用しないワードなのです。安倍総理の発言は「国連くそくらえ」と言っているのと同じ意味に捉えられ「日本はまた国連脱退か?」と思われてしまい、リビジョニストと呼ばれたのです。これは日本人が戦後、戦争について学ぶことを止めた結果、国際社会における為政者や政治家にとって基本中の基本である「集団安全保障」について勉強してこなかったツケと言えます。
現在、アメリカは中国やロシアのことをリビジョニストと呼びますが、これは最大級の罵り言葉です。その言葉を当時の安倍総理も浴びせられたわけです。
(つづく)