日本周辺国の軍事力状況(4)

中国は統一朝鮮軍を利用して尖閣を取る前に、まずは台湾を取っているかもしれません。ただそのシナリオはさすがにアメリカが許しませんから、尖閣を取ってみて、アメリカがあまり出てこないようなら「よし、次は台湾に行こう」いうケースならば考えられます。実際、中国は10年以上前から中国本土に台湾の空港や市街地を完全に模した訓練場を作って、そこで定期的に戦闘訓練をしています。

ところが肝心の台湾人には危機感がありません。軍隊も海軍陸戦隊(海兵隊)以外は中国と本気で戦う気がないのではと感じます。私も以前は中国からの日本の防波堤として、日本と共に中国に対抗してくれると思っていたのですが、実際に台湾の軍関係者と話をしてみて、その考えに疑問を覚えるようになりました。

そもそも台湾軍は国民党の軍隊ですから、退官後将軍クラスなどは、台湾ではなく中国本土(メインランド)に住んでいます。中国も台湾も「ひとつの中国」と思っていますが、特に国民党から来た人たちは「そもそも国民党がメインでひとつなんだ」という意識なので、台湾に追いやられたけれど「メインランドこそが自分たちのもの」と今でも思っています。だから退官後はメインランドに「戻る」という発想になるのです。

2008~2016年に中国国民党主席だった馬英九が親中を推し進めたのは、国民党の本音です。むしろ日本好きな李登輝だけが別だったのだと思います。
また、台湾軍は今の民進党政権を嫌っています。その理由が「軍に口出しするから」。国民党は軍が作成した人事案に対して総統府は「了解」と言うだけなのに、民進党は「注文をつけてくるから最低だ」というのです。
こんな調子ですから、仮に日本と統一朝鮮がトラブったとしても、台湾は高みの見物を決め込むでしょう。もっとも、軍事力が十分でありませんからなにもできません。台湾も自分たちの国力の限界をわかっていて、中国と戦うこと自体をあきらめてしまっているようなところがあるのです。
また、中国とこのような関係がある台湾を、アメリカが心底から信用するはずがありません。アメリカでは2018年に台湾旅行法が成立し、アメリカの高官が台湾へ自由に行き来できるようになりました。ところが2019年の段階でまだ誰も行っていないのです。アメリカが台湾に渡す戦闘機もF-16と古い機種、要は信用していないのです。

今回の総統選挙で蔡英文氏が再選しましたが、これは香港の事案が他人ごとではないと台湾人が感じたからです。それでも中国と本気で戦うということは軍も含め、誰も真剣に考えていません。だから富裕層はシンガポールや米国に土地や家屋を購入し、国籍さえ取得している人もいるように、なにかあればただちに国を捨てて移住する気でいるようです。
私から見ると、台湾は「アメリカがこちら側にいることでぎりぎり抑止は働いているけれど、その抑止が消えたら台湾は瞬間で消えてなくなる」と観念しているように見え、同時に、「でも抑止力がある限りは絶対に戦争にはならない」という楽観的平和主義に傾いている気がします。ですからそんな台湾に過剰な期待をする一部の日本の人たちは、もう少し冷静な判断をする必要があると思っています。