日本周辺国の軍事力状況(1)
日本の周辺には残念ながらロシア、中国、北朝鮮という「他国を脅すのが大好き」な国がいるので、日本が常に脅威にさらされているのは事実です。
この3カ国の中で、日本が直接戦うかもしれないという蓋然性が高い国は中国です。「尖閣諸島は自国領土」と、1992年の領海法で勝手に定めているからです。法律で定めた以上、治安維持の名目でいつでも武力行使ができ、それが中国国内では正当化されています。ロシアと北朝鮮については、日本と直接ガチンコで戦うというよりは、二次的、三次的に日本防衛に影響する国と考えられます。
具体的に言うと、北朝鮮がまず戦うのは、日本ではなく韓国です。
日本を攻撃するとすれば、北朝鮮軍が米韓合同軍と戦争しているさなか、在韓米軍への補給路を断つために在日米軍に対してミサイル攻撃するという事案でしょう。または平時にあっても、日本海や日本列島を飛び越してのミサイル発射実験が、手違いで日本に落下してしまうという事案です。さらには、自国の排他的経済水域と主張し、日本海の大和堆をわが物顔で操業する漁船群との小競り合いといった事案もあるかもしれません。
ロシアにしても、欧州に対してはなにかあったらすぐ戦うという構えでいる一方で、日本に対してはまったく脅威を感じていないので、戦争をしかける理由がありません。
ただし横須賀にいる米海軍の第7艦隊はロシアにとって厄介な存在なので、自由にオホーツク海に入れさないという観点から日本に圧力をかけてくることが考えられます。現に北方領土の日本返還反対論として「日米安保があるなら返さない」として、これを主張しています。
なお、日米安保がしっかりしている現状で、中国が日本と本格的な全面戦争をするとは考えられませんが、もしそうなった場合、日本だけでその攻撃に耐えるのは無理といわざるを得ません。ミサイルだけをとってもその数はおびただしく、北朝鮮など比べようがありません。イージス艦やPAC3ですべてを迎撃することは不可能です。
ではまずロシアから見てみましょう。
冷戦時代は日本にとって最大の敵でしたが、今も油断のならない存在であることは変わりません。
ソ連時代、ソ連空軍が毎週のように行なっていた千島列島に出て、北海道東岸から本州太平洋側を沖縄本島付近まで南下したり、沖縄から日本海方面に抜けて日本列島を1周したりするいわゆる「東京急行」は、回数こそ減ったもののいまだに行なわれており、空自がそのつどスクランブルで対処しています。
ロシアは東京急行について「長距離飛行訓練だ」と開き直っていますが、これはあながち嘘ではありません。確かにパイロットが技量を維持するためには、フライト時数を確保することが不可欠だからです。
ソ連崩壊後、ロシア空軍は約10年、ほとんど軍用機を飛行させられない期間がありました。どれほど腕のあるパイロットでも10年のブランクがあると操縦の腕は鈍り、0からの出発になるものです。とはいえ、日本周辺を脅かす飛行が許される理由にはなりません。
東京急行などは鬱陶しいものの、まだかわいい事象と言えるかもしれません。ロシアの最大に厄介なところは、軍事力を政治な脅しとして使うところです。脅しは「交渉力」と言い換えてもいいでしょう。
(つづく)