日本に足りないシステム&法整備(7)
4月からスタートした伊藤俊幸氏のインタビュー記事、「GSOMIAの裏側と韓国人の米国依存」「日本×統一朝鮮というシナリオ」「日本周辺の軍事力状況」、そして現在の「日本に足りないシステム&法整備」と続いてきました。1冊のムックに掲載された記事でしたが、連載にしてみるとこれほど長いものだったのかと自分でも驚いています。約5年前でも色あせない現在への警鐘を随所に感じ、私自身も最後まで学び直しすることができました。
武器の使用についても国交省にぶら下がっているから、やっと危害射撃ができるようになった今の状態が精一杯なのでしょう。しかしこの危害射撃も(公の船を除く)となっているので、尖閣でにらみ合っている海警の中国公船に対しては、海保側は正当防衛以外では武器を使うこともできません。いわんや中国軍艦に対しては、武器が使えない状況です。
実は海自も似たようなもので、海上警備行動でも、相手の軍艦に対して停船させるための射撃も許されていません。このような基準を変えない限り、海自にしろ海保にしろ、現場の負担が増すばかりです。
今の時代、アメリカ以外に一国だけで戦える国はありません。
「自分たちだけでなんとかしよう」という議論が日本にもありますが、ではそのために防衛費を10兆、20兆にするといって、国民はそれを受け入れるでしょうか。
どういう姿を目指すかという視点で考えるなら、私は抑止力が働くレベルの防衛力整備がいいのだと思っています。まさに相手に「今なら日本を攻撃できる」という気持ちを絶対に起こさせない程度の力、これを持ち続けるということです。それはそのまま他国に対する交渉力であるとも言えます。つまり、他国に日本の意思を通用させる「交渉力」として必要なレベルの軍事力が必要だということです。
現在の日本は軍事力を使わないうえ、経済力も中国に圧倒されていることから、必然的に他国に対する交渉力が低くなっている状況にあると思います。しかし、海自にいたってはアメリカに次ぐイージス艦7隻(2021年から8隻)を保持する、世界2位の組織です。そこを前面に押し出さないから、北朝鮮の漁船ごときになめられるのです。これぞ交渉力のなさの典型といえます。堂々と「自衛隊は強い」として、外交交渉したり発信したりすればいいのではないでしょうか。
また、予算がついても肝心の人が集まらなければ、どれほど最新の装備品だろうが宝の持ち腐れです。少子化が進み、今後の自衛隊はますますの募集難が予想されます。装備品は自動化、省力化を進め、知的レベルが高い国家なのですから無人機の運用についても積極的に活用していくべきでしょう。
(了)