対馬の3自衛隊(11)

対馬の陸海空自衛隊が所在しますが、対馬駐屯地には22名、対馬防備隊は本部に1名、海栗島分屯基地には9名の女性自衛官が勤務しています(2024年6月当時)。
対馬駐屯地司令は「ワークライフバランスに関する各種制度が充実してきたことが、女性自衛官活躍につながっていると考えます」、対馬防備隊司令は「男性隊員と違った視点でリコメンドしてくれるのが部隊としてもありがたいです」、そして海栗島分屯基地司令は「彼女たちの力なくして部隊は回りません」。

各司令が認める陸海空女性自衛官たちにも話を聞きました。
対馬警備隊後方支援隊本部係陸曹の3曹は「対馬駐屯地は現在5年目、車両整備を経て現在は書類作成などの事務を行なっています。対馬駐屯地は女性の活躍を応援してくれるので、こちらも『自分にできることはないか』と前向きな気持ちになります。島の勤務がとても気に入っているので、いつか奄美駐屯地でも勤務してみたいです」。

後方支援隊整備小隊の車両整備員は、取材時は士長でしたが、現在は3曹に昇任。
「自衛官の父がかっこよくて、私も自衛官を目指しました。兄と弟も自衛官です。駐屯地内にある車両ならすべて整備できますが、個人的にはトレーラーの整備がいちばん好きです。対馬はとても気に入っているので、これからも長くここに勤務したいです」。

対馬防備隊唯一の女性自衛官である曹長は対馬出身。
「経理業務を担当しています。女性専用のトイレがないので、トイレのドアには男女どちらが使用中かわかる札がかけられています。ときどき誰かが使用中の札を戻し忘れてしまうときは困りますね(笑)。シングルマザーなので、八戸航空基地勤務時の長期訓練中に子どもが水ぼうそうにかかってしまったときは、母が対馬から駆けつけてくれてありがたかったです。家族や先輩に支えられてやってこられたので、今後女性隊員のいる部署に配属されたときは、後輩たちのサポートをしたいです」。

空自のレーダーサイトは僻地にあることが多いので、必然的に陸の孤島状態の場所が勤務地となります。
海栗島分屯基地に至っては二重離島、しかも島には空自隊員しか存在しないという、人によっては地獄のようなロケーションでしょう。
そんな場所で働く女性自衛官9名のうち、空曹の2名は営外で暮らすことができますが、うち1名の1曹は単身赴任ということもあり、あえて営内に居住しています。
空士たちに話を聞いてみたところ、「船が嫌いなので休日も海栗島から出ない。Amazonで買ったものも届くし、スマホがあればなんの不自由もない」、「週末はほぼ対馬本島に遊びに行くけれど、夏以外は最終便が17時なのがつらい」「最新のJ/FPS-7の整備に関われるのはうれしい」、「お気に入りのきれいなビーチに韓国人観光客がいっぱいいるので、韓国に行かなくても交流できるのが楽しい」、「島の勤務だけは絶対に嫌だったので、配属先が決まったときは泣きまくった。でも実際に来てみると案外楽しくやっている」など、実にあっけらかんとしています。
制約や不自由、不便の多いはずの日常でも、彼女たちなりに楽しむ術を習得しているようです。