今こそ知りたい陸自の後方支援(3)
7後支の第1整備大隊隷下の部隊紹介の続きです。
火器整備隊で目にしたのは、目に見えない粉塵を吸い取るダクトの音だけが響く部屋で、無反動砲の照準の調整をしている隊員です。
あらゆる火器で照準のズレは許されず、少しでもズレが生じた場合はこの部屋で隊員がまさに「集中すると時間も忘れて」調整します。
取材時に作業していたのは陸士でしたが、ベテラン陸曹にも劣らない落ち着きと自信が感じられ、実に頼もしく感じました。ちなみにこの隊員も女性です。
火器整備隊長によると、好奇心旺盛な隊員は必然的に技術力が高くなるそうです。武器科の隊員は武器学校に入校して整備を学びますが、すべての機材を学ぶわけではなく、部隊に配属されて初めて扱うという機材があることも珍しくありません。学校で学んだ基礎的な技術をベースに、現場で先輩たちの整備技術を伝授してもらい、それをさらに自分なりに磨いていくのです。
施設整備隊は第7師団隷下の施設大隊、通信大隊、飛行隊、化学防護隊、師団部付隊、音楽隊などの部隊が保有する施設機材の整備を担当しており、整備工場には諸部隊の各施設機材が整備のため格納されていました。
取材時はちょうど第7施設大隊が装備する07式機動支援橋の車検に向けた整備中(車検も駐屯地内の車検場で行なえます)で、92式地雷原処理車の整備も行なわれていました。これらはいかにも施設部隊ならではの装備品ですが、実は施設車両の多くは建設機材に関わるもので、民間でも使用されているドーザや油圧ショベル、バケット、グレーダ、さらにはチェーンソーや草刈り機、発電機などまで整備の対象です。多岐にわたる装備品すべての整備をこなせるようになるまでには10年ほどかかるそうです。
通信電子整備隊ではちょうど局地無線搬送装置JMRCーC80の送受信部の性能検査を実施しているところでした。これは共用通信所と指揮所通信所の間の通信の接続をする機材で、通信電子整備隊が保有している野整備試験装置JTM92で各機能の点検や性能試験、故障の有無を調べます。
通信の構築は指揮そのもののため、有事の際はもちろん災害派遣の現場でも不可欠なものであり、無線機などはそれだけ使用頻度が高い分、おのずと故障も多くなります。通信機材を使用している部隊が災害派遣の現場などで急に通信に不具合が生じたなどは、現地まで足を運んで修理することもあり、間接的にでも被災者の役に立てているという達成感があるといいます。
第1整備隊でもっとも小規模ながらとりわけ異彩を放っていたのは工作回収隊です。壊れたものを修理するだけでなく、新たに作り出してしまうものづくり集団です。
工場で作業している姿を見ているだけでは、自衛隊の部隊というより町工場といったほうがしっくりきます。もちろん腕前は確かなもので、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震でヒビが入ってしまった7後支隊舎玄関のエンブレムも、工作回収隊がよりグレードアップしたものを難なく作り上げました。「ここに傘立てがあるといいな」という指揮官のつぶやきを耳にして、数日後にはその場所にできたての傘立てが置かれていたというエピソードも。このような匠の職人集団がいるのが後方支援連隊なのです。
次週は第2整備大隊の部隊をご紹介します。
(つづく)