陸上自衛隊通信団第301映像写真中隊(3)
今回は第301映像写真中隊(以下、映写中)が使う映像調整室の様子からご案内します。
取材時はちょうどナレーションの録音が行われていました。音を立てるのは厳禁なので、靴を包み込むような手作りスリッパに履き替えます。二重ドアの先にあるアナウンスブースでは、風の音が響くからと、真夏であってもエアコンは使えません。
専門の学校でアナウンスを学んだWACの陸士長が、Qランプの点滅に合わせて原稿を読み上げていきます。ミキサーの陸曹から「さっきのところ、少し読むのが早くなるから気をつけて」と指示が出ましたが、聞いていたこちらは早く読んだ部分などまったくわかりません。その陸曹は「映像にはひとつの作品を完結させるという、作り上げる喜びがありますね」と言っていました。そこに写真とは異なる映像の面白さがあるのかもしれません。
映像や録音されたアナウンスは、映像編集室で編集されます。編集にはビデオ映像をダビングしながら編集するリニア編集、動画をいったんハードディスクにデジタルデータとして取り込み、それをパソコンなどで編集するノンリニア編集の2種類があり、それぞれ機器が異なります。アナログとデジタルを併用することで覚えなくてはいけないことも倍になっていますが、隊員たちはいずれの機器も自在に扱え、撮影から編集までひとりでこなせるそうです。ただし取材時からすでに数年経っているので、現在はもうノンリニア編集しか行われていないかもしれませんね。
別の日のスタジオでは、写真小隊によるポートレート撮影の教育が行われていました。
ライトのセッティング位置、露出計の使い方、レフ板を使う理由など、ベテラン陸曹が手際よく実践してみせながら説明していきます。
「この高いライトが主光で太陽の代わり、低いほうが補助光ね。太陽が2つあったらおかしいから、主光源は必ずひとつ。レフは1灯分の役目を果たすから、こうやって主光の正面に置いて」。
わかりやすい説明は、思わず「勉強になるなあ」と聞き入ってしまうほど。
ここで指導するのは、器材の扱いや撮影方法についてだけではありません。被写体とどのように接するか、その応対のノウハウも学ぶ必要があります。被写体が座る際には、椅子が回らないよう背もたれをそっと押さえてあげること、髪の毛や衣類に乱れがないか細かく確認すること。座ったときに制服で一番しわがよる部分は腕や肘の周辺なので、一度腕を伸ばしてもらって直すこと。言わなくてもそれくらいわかるだろう、ではなく、どんなに小さなことでも言葉で教えることの大事さを感じました。
映像写真中隊には陸士が多く、彼らの戦力なくして任務は遂行できません。そのため、陸士の教育は計画的に行われます。
1年目は同行する班長の指示により業務が実施できるレベルに。次の年は擬似環境での訓練と実環境での研修によって、業務を単独行動で実施できることを目標に。そして3年目には、作業要求命令書の内容を理解して業務が実施できるレベルにまで達することができるように、といった具合です。
次回は取材時の中隊長のお話などをご紹介します。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成27年(西暦2015年)4月30日配信)