第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(12)
即機連新編と同時に火力支援中隊と部隊名が変わる重迫中隊は、120mm迫撃砲の実射に臨んでいました。
もともと重迫中隊は普通科職種ですが、火力支援中隊になると特科職種となるため、すでに隊員の多くは特科の隊員で占められています。言い換えればまだ120㎜迫撃砲に慣れていないわけで、半数以上の隊員が今回初めての実射となりました。
重迫中隊長の武田暁典3佐も、これまで155mm自走りゅう弾砲一筋でやってきたとあって、最初はとまどうこともあったといいます。
「120mmは火砲と射角の概念が真逆になるんです。大砲は射角を上げれば射距離が伸びますが、迫撃砲は逆に縮みます。そこは特科の隊員はみんな最初とまどうと思います。しかし機敏に陣地変換ができるし弾の発射速度は速いし、扱っていて面白さを感じる部分もあります。これから雪の季節になりますから、積雪寒冷地における迫撃砲の扱いも練成していきたいと思っています」
15日、MCVの最後の射撃は今回の訓練の集大成でもある単車戦闘射撃です。篠村和也第2師団副師団長も視察に訪れました。
戦闘射撃はその名の通り、戦闘しているという想定で行なう射撃なので、射撃目標となる標的がいつどこに現れるかわかりません。状況開始でMCVが前進すると、いきなり無線で目標が付与されます。
HEATを停止射撃した後、今度は1~4番ある目標のうち「0番」と指示、その段階で行進射撃します。
車長の指揮は迅速かつ的確か、砲手は確実な距離確認と弾種選択、行進射撃における果断な射撃、正確な射弾の観測・修正ができたか、そして操縦手は行進間の装填の際に速度が一定だったかといった点が指導のポイントになります。これでMCV中隊準備隊の初の射撃訓練は終了しました。
齋藤準備隊長は「隊員たちは日々練度が向上しました。特に乗員の共同連携というところで非常に成果が上がったと感じますし、射撃の精度も非常によかったです。砲手は毎晩遅くまでその日射撃した弾を研究し、明日はどういう諸元で射ち出せばいいのかを検討していました。今後は10ネットワークを使い小隊で連携して射撃するという、より難易度の高い訓練が行なわれるので、各車両の連携を図る練成を重ねていきたいと思います」。
山﨑連隊長も「即機連の母体は普通科ですが諸職種連合部隊なので、単なる寄せ集め集団になってしまうと戦力が発揮できません。各職種のいいところを引き出して最高のパフォーマンスを発揮できるよう、ひとつの目標に向かって進めていくのが僕の役目です」と語りました。
3連隊は2022年春までに、まだ何度かの連隊規模の訓練が予定されているそうです。これから名寄は長い冬に入ります。訓練をするにはまず除雪、MCVを動かすにもまず除雪という日々が何ヵ月も続きます。そしてまだ雪解けにはほど遠い3月、3連隊は新たな歴史を刻むことになります。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)6月16日配信)