第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(2)
訓練検閲のお話の続きです。
2020年2月10日、対抗部隊からの攻撃を受け、第3戦闘団の防御戦闘が始まりました。
前衛中隊として第一線に配置されていたのは(第3普通科連隊の)第1中隊です。さらにその前にはGOP(全般前哨)がいるという想定になっています。
GOPは敵と接触するかしないかの距離を保ちながら一定の地点まで下がり、そこから先は第3戦闘団に委ねます。
1中隊は敵の斥候を見つけること、そしてある程度の規模の敵襲を受けても持ちこたえて、主力が態勢を整えるまでの時間を稼ぐことが求められるCOP(戦闘前哨)の任務を受けています。
GOPが下がってきたところで、施設部隊が地雷を設置して障害を構築。その後、第3戦闘団の抵抗により対抗部隊が押し切れず下がる場面もありました。
翌日の明け方、第4中隊の防御戦闘が行なわれている陣地から離れた場所で、第2、第3中隊は戦闘力の少ないところの間隙を縫って攻めてくる対抗部隊を警戒していました。
足場の悪い急な斜面には、01式軽対戦車誘導弾をかまえた隊員が展開しています。
木枝の伐採をせずに林の中から01式が撃てるのかといえば、伐採していい木は「幹の直径が○センチ以下」など演習場ごとに制約があるため、演習の際は「伐採した」という想定で進めるのだそうです。そこで「射界を清掃すればいちばん狙える」という場所に陣地構築しています。
一方、昨日までCOPの大役を担っていた1中隊は、この日は必要に応じて戦闘団長の命によって投入される予備隊として待機していました。予備隊もCOP同様重要な任務で、「攻め込まれ突破されるとまずい」というときに発動がかかるので後がない、いわば「最後の砦」です。
第3戦闘団としては予備隊を投入せずに済むのがベストですが、10時30分に予備隊は突破された陣地へと前進。その後、昼過ぎに状況終了、訓練検閲は終了しました。
第1中隊を率いた中隊長の山下英晃3佐は、2020年3月に着隊するまで長らく水陸機動団に所属していました。
スキー行進は「夏の行軍の3倍きつく感じた」そうです。今回の訓練検閲の感想を聞きました。
「最後の予備隊としての逆襲はうまくいきました。逆襲はほとんど成功しない難しい戦術行動ですが、戦闘団長は『敵殲滅、全員生還』という統率方針を掲げられているので、われわれも『抜かせない。第一線は絶対に守る』という強い意志で逆襲を決しました。しかし前衛中隊長として、また戦闘前哨の中隊長としては、最低限の任務は達成できたものの、もっと連隊に寄与できたのではと感じています」
逆襲の際に掲げられた「毘」の旗は、昨夏できたばかり。「毘」の文字は1中隊のシンボルマークで、北の守りを象徴する軍神である毘沙門天に由来します。最北の前衛部隊として、今回の訓練検閲でも大きな存在感を放ちました。
「COPという難しい任務を冬季にできる部隊としては、1中隊は日本一だと自負しています」
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和四年(西暦2022年)3月24日配信)