防衛装備庁(4)
ひとつの装備品が実際に装備化されるには、実に多くのステップを踏んでいかなければならず、さらにユーザーである各自衛隊との連携も不可欠です。
まず、各自衛隊から「こういう装備品が欲しい」という運用上のニーズがあった場合や、防衛装備庁が技術的可能性を見いだせそうな装備品に対し、技術研究が行なわれます。
陸上、艦艇、航空、電子各装備研究所等の該当する研究所で「技術的リスク解決のための研究」「システムコンセプトの研究」「先進的技術の研究」等が行なわれ、それらをクリアすると、初めて各自衛隊からの開発要求を受け、技術開発官による技術開発へと進みます。
ここでは装備品の試作のほか、各装備研究所ならびに札幌、下北、土浦、岐阜にある試験場での技術試験も実施。さらに各自衛隊でも実用試験を行ない、何年もかけ、ようやく装備化されるのです。
機動戦闘車16MCVやC-2輸送機などは技本が研究開発していたもので、そのまま防衛装備庁に引き継がれた後、部隊に装備されました。新しい組織になっても、研究開発部門を担う旧技本の部署は、防衛技術のフロントランナーとして存在感を放っているわけです。
さて、防衛装備庁の任務は
・防衛装備品の効率的な取得(プロジェクト管理)
・諸外国との防衛装備・技術協力の強化
・技術力の強化と運用ニーズの円滑・迅速な反映
・防衛生産・技術基盤の維持強化
・コスト削減の取り組みと監察・監査機能の強化
の5点です。これらの任務について、詳しく見ていくこととする。
まずは第2回で「目玉の部署」と称した、プロジェクト管理部が関わるプロジェクト管理です。
プロジェクト管理とは、装備品等の構想段階から廃棄にいたるまでのライフサイクルについて、各過程をシームレスかつ組織横断的に把握しつつ、効果的・効率的に行なっていくための方針や計画を作成したり、必要な調整を行なったりすることです。
防衛省における従来の装備調達は、構想、開発、量産、維持・整備及び廃棄といったライフサイクルの各段階を、それぞれの担当部局が個別に所掌していたため、コスト上昇に対する一貫性のある迅速な対応が困難でした。
しかしそれらが防衛装備庁に統合されたことで、プロジェクト管理を行なうことが可能となり、防衛装備品の効率的な取得が見込めるようになったのです。
プロジェクト管理を主導するプロジェクト管理部には文官、自衛官を配置し、プロジェクトマネージャー(PM)のもと、統合プロジェクトチーム(IPT)がプロジェクト管理を実施する体制となっています。装備品の計画に沿った取得、配備及び部隊における運用を、ライフサイクルを通じて適切なコストで実施すれば、より効果的・効率的な防衛力整備を進めることができるわけです。
プロジェクト管理強化のための取り組みとしては、プロジェクト管理を実施する体制などを定めたPM/IPT包括通達(事務次官通達)が制定されています。
またプロジェクト管理を実施するためのガイドライン(手引書)案を作成したほか、PM/IPTに関する人材育成の一環として、米国や民間におけるプロジェクト管理手法の研修を装備施設本部等において年に数回実施。
さらに装備品等の予定価格を独自に積算するためコスト情報をデータベース化し、そのデータを分析するための整備を実施しました。軌道に乗れば画期的な管理方法であるだけに、関わる人間の教育などを含む準備には、相応の時間や労力を必要とします。長い目で見ることも必要というわけです。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和三年(西暦2021年)5月27日配信)