第25戦闘団冬季訓練検閲(7)
見晴らしのいい高台では81式短距離地対空誘導弾(C)、通称短SAM
のFCS(射撃統制装置)のレーダーが小さな音を立てて回転しています。
25戦闘団の特科部隊として参加している旭川駐屯地の第2高射特科大
隊は、学校をのぞき、全国で唯一高射特科が運用する装備、短SAMと
93式近距離地対空誘導弾(近SAM)、87式自走高射機関砲(AW)す
べてを備えています。
また2師団ならではのデジタル化も進んでおり、指揮統制装置・対空作
戦調整所装置・通信装置からなるADCCS(対空戦闘指揮統制システム)
も装備しています。一見したところただの幌付き3.5tトラックですが、これ
によって他部隊と対空情報を共有し、一元的な式統計のもとで対空戦
闘を実施することが可能となっています。
短SAMには先端が尖っている電波弾と丸い形状の光波弾の2種類の
弾があり、電波妨害があるなどレーダーを使用できない場合は光波弾を
用い、FCSが統制した射撃では電波弾が優先されます。レーダーは常に
最新の情報を弾に送り続けることができるので、飛翔コースの補正も可
能なほか、ADCCSとも連接しています。
この日の最後に訪れた統裁部には、戦闘団CPよりさらに多くのパソコンがず
らりと並んでいました。
壁には紙の地図やプロジェクタではなく大型モニタが並び、そこにWEBカ
メラ、作戦図、状況図などが表示されています。ほかの師団でもプロジェク
タは使いますが、それはあくまでも資料を映し出すためのもの。
ここでは隊員も車両等も交戦装置、いわゆるバトラーを装着しているので、
誰が今現在どこにいるのか、固有名詞までがモニタに映し出され、情報は
3秒ごとに更新されます。
砲弾についてもその諸元はもちろん、いつどこに何発撃ってどこに落ちて
という座標が把握できるだけでなく、そこから半径○mの範囲の隊員の負
傷の度合いや怪我の部位まで決まります。しかも上富良野演習場の地図
データが入力済みなので、低地にいたため重傷を負う、林の中にいたので
軽傷で済んだなど、地形まで反映されるのです。
敵の位置情報もリアルタイムで把握できるだけでなく、全員が同じ情報を
時間のロスなく共有できるのが2師団ならではの強みでしょう。
新年も引き続きデジタル化された2師団の特性についてご紹介します。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成26年(西暦2014年)12月25日配信)