メイキングオブ防衛白書(1)
白書。
それは中央省庁が編集する政府刊行物のことです。
日本で最初に発行された白書は昭和22年の『経済実相報告書』で、昭和26年には『経済白書』という名になっています。
現在、各省庁においてさまざまな白書が刊行されていますが、群を抜いて発行部数の多いのが防衛白書です。
防衛白書とはどんなものなのか。これは平成22年版防衛白書、北沢防衛大臣の巻頭の言葉の一節が簡潔に表しています。
「防衛省は、わが国の防衛政策や1年間の防衛省・自衛隊に関わる主要な事象を記述した防衛白書を毎年刊行しています。本書は、より多くの国民のみなさまに、わが国の防衛についての理解を深めていただくとともに、わが国の防衛政策の透明性を担保し、わが国に対する諸外国の理解と信頼を高める、という大きな意義を有しております」
つまり、国民と諸外国に対して防衛省が発信するものであり、現実に起きた、あるいは現在も継続している出来事について書かれているもの。
だから過去と現在は記載しても、将来の見通しについては既定方針となっているもの以外は基本的に触れないのが特色です。
防衛白書が初めて発刊されたのは昭和45年の中曽根防衛庁長官時代で(今年最初のメルマガで中曽根長官のあいさつ文をご紹介しました)、B6判本文67ページというボリュームでした。毎年発刊されるようになったのは昭和51年の坂田長官以降のことです。
また、第1回の白書は防衛庁の職員、いわゆるキャリア3名により編集されたそうですが、第2回以降は陸海空自衛官に庶務を担当する女性自衛官も加わりました。
平成3年までの防衛白書は、国際軍事情勢、基本的かつ重要な防衛事項、毎年度の防衛力整備、そしてその年に起こった国民の関心の高い事項を主要なテーマとして作成されてきました。
平成4年版からは新たに「国際貢献と自衛隊」という章が設けられ、自衛隊の国際的な活動が主要なテーマに加えられました。
さらに平成8年版からは、大規模災害など自衛隊の多様な役割や、軍備管理・軍縮など安定した安全保障環境の構築への貢献に焦点があてられるようになりました。
平成29年度の白書では自衛隊員という「人」に着目し、新たに章を設けて人事施策について説明するようになりました。
そして最新の令和元年度の白書ではこれまで「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組」というひとつの章にまとめられていた部分を「わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)」と「防衛力を構成する中心的な要素など」というふたつの章立てとしました。
このように、わが国の防衛の基本方針といった白書の軸となる部分は押さえつつ、時代の変化に合わせて白書の内容も柔軟に対応してきています。
紙面サイズについても平成12年に大判化し、より見やすく読みやすい配慮がなされたほか、価格も値下げされました。
本文のレイアウトも平成18年から2段組にすることで、ページ数を増やすことなく文字数は確保できるようにするなどの工夫が凝らされています。
平成22年版からは環境にも配慮し、印刷には大豆インクを使用、有害な廃液が一切出ない水なし印刷が用いられています。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
(令和二年(西暦2020年)3月26日配信)