航空自衛隊 第1高射群(7)
先週に続き、今週も第1高射群第4高射隊射撃小隊と整備小隊の転地訓練の話です。
どこでも機動展開して防空対処するのが高射部隊の任務ゆえ、部隊が荒れ地や障害物が多いような場所に展開することもないわけではありません。しかし現実には防護対象が平野部だったり都市部であったりするので、おのずと展開場所も似た地形の場所になります。ちょうど取材時に訓練している場所のような平坦な地への展開が基本なのでしょう。
射撃小隊の高射操作員達は少しの移動でも駆け足で、作業の1つ1つをそのつど声に出して確認していきます。大声が飛び交う現場は、空自というよりも陸自の訓練をほうふつさせます。取材していると、空自の高射部隊と陸自の高射特科部隊の空気が驚くほど似ていることに何度も驚かされました。陸海空自衛隊には歴史、伝統、文化などさまざまな違いから、どれほど統合運用が進もうと決して染まらない独自の「色」がありますが、陸自のナイキが部隊ごと空自に移管され高射部隊が誕生したという背景もあるのでしょうか、本当に似ています。実際、射撃小隊と行動を共にする整備小隊はいかなる展開先でもペトリオットの整備を行うので、陸自の野整備さながらです。
アンテナマスト・グループには無線整備員、電源車には電気整備員、射撃管制装置にはシステム通信員といった具合に、各車両に整備員が配備され、射撃小隊の隊員と一緒になって走り回っています。はたから見ていると、射撃小隊と整備小隊の隊員が区別できません。それもそのはずで、限られた人数で1秒でも早く展開するため、手が空けばすぐさま人手が足りなさそうな場所を手伝うのが高射隊の常となっているのです。高射操作員も特定の器材だけでなく、どれでも扱えなければなりません。さらに器材の運搬も行うし、展開先では炊事や警備まで自分たちで行ないます。だからチームワークが大事と何度も耳にしたし、部隊の団結力が強いという話も聞きました。
器材の態勢がすべて整うと、さほど時間をおかずに今度はすべて撤去し場所を移動、再起動します。陣地変換の小規模版といったところですね。場所の都合上、電源車などより少し離れて展開していた発射機も、現在展開している第4高射隊のグラウンドからいったん撤収し、再び展開してからリロード訓練と呼ばれるミサイルの積め替えを行ないます。これはミサイルを発射したという想定で、空になったキャニスターを発射機から外してミサイル運搬車に乗せ、新たな弾をクレーンで設置するというもの。ミサイル運搬車、クレーン車、発射機のすべての連携が取れていなければ作業はスムーズに進みません。リロード訓練はチームワークが試される最たるものの1つと言えます。ペトリオットシステムがどれほど機械化されても、ミサイルの積み替えはチームプレーなしに迅速に行なうことはできないのです。
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成30年(西暦2018年)6月21日配信)