警戒航空隊(2)
警戒航空隊の誕生には、1976年9月に起きた「ミグ25事件」が
大きく関わっています。これは亡命目的のソ連の迎撃闘機ミグ25が、
領空侵犯の末、函館空港に強制着陸したという事件です。
地上に配備されているレーダーでは、地球が丸いゆえに、
超低空飛行を行う航空機の捕捉はできませんでした。
また、スクランブル発進したF-4EJのレーダーも、低空の
目標を探す能力が高くありませんでした。
そのため、結局ミグ25はその姿を発見されないまま
函館空港まで到達してしまったのです。
これはとんでもないことです。
日本の防衛能力のもろさを目の当たりにすることになった
この「ミグ25事件」によって早期警戒機の必要性が説かれる
ようになり、警戒航空隊が新編。三沢基地にE-2Cが、
その後浜松基地にAWACSが導入されました。
アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、NATOも
AWACSを保有しています。他国のAWACSはボーイング707
をベースにしているE-3ですが、日本のAWACSは
ボーイング767-200型機をベースとしたE-767。旅客機と
違って胴体部分には窓がなく、後部胴体上方にAWACSの
象徴であるお皿のような回転式レーダーアンテナ、
ロートドームを配置しています。これは1分間に6回転しています。
E-3よりも床面積が1.5倍も広いので、E-3のクルーたちが
大いにうらやましがるとか。
B767ベースのAWACSを保有しているのは世界で日本だけ
なので、当然ながら他国からの注目度も高くなります。
2000年に運用を開始して以来、海外の武官の訪問や
取材依頼が途切れることがありません。
ここで航空自衛隊HPに掲載されているAWACSの紹介文を引用します。
===ここから===
E-767
優れた飛行性能と高高度で長時間の警戒監視能力を持っています
旅客機B-767をベースに、警戒管制システムを搭載した
新型の早期警戒管制機がE-767です。速度性能に優れ、
航続時間が長いので、遠隔地まで飛行して長時間の警戒
が可能です。さらに高高度での警戒もできるので見通し距離
が長いなど、優れた飛行性能と警戒監視能力を持っています。
主な装備は、3次元方式の捜索用レーダー、味方識別装置、
通信装置、航法装置、コンピュータ、状況表示装置など。
平成12年から運用を開始しています。
===ここまで===
補足すると、乗員は操縦者2名、ミッションクルー18名
の計20名。約12時間と航続時間が長いので、遠隔地へ
進出して哨戒ができるほか、多数の通信装置によって
複数の相手と同時に自動データ伝送および音声通信が
可能です。
E-767をすっぽり収められるとあって、ハンガーも巨大です。
整然と片付けられたハンガー内で黙々と自分の仕事を
こなしている隊員たちが、やけに小さく感じます。面白いのは
AWACSを囲んでいる足場で、ロートドームの部分は
その形に合わせて円形になっています。この足場そのものも、
年に1度しっかり整備されるそう。
このロートドーム、一見薄い皿のような感じですが、実は
直径9.1m、厚みは1.8mもあります。
(わたなべ・ようこ)
(平成26年(西暦2014年 皇紀2674年) 9月25日配信)