与那国駐屯地と沿岸監視隊(3)
今週も与那国駐屯地と沿岸監視隊の紹介です。
与那国駐屯地所属隊員出身比率を見てみると、沖縄出身者は15%。そのうち本島10%、与那国・石垣・宮古出身が5%で、住民の自衛隊への理解を促進する一助となっています。九州・沖縄出身者が約8割を占め、西部方面隊選りすぐりの隊員からなる駐屯地といえるでしょう。
また、情報収集には専門的な知識や技術が求められるため、宗谷海峡を警戒・監視をする第301沿岸監視隊、根室海峡を警戒・監視する第302沿岸監視隊から選ばれて来たスペシャリストもいます。なお、この駐屯地はもともと航空自衛隊が展開できるよう設計されているので、現在も空自の移動警戒隊が定期的に訓練で訪れています。海上自衛隊は定期的ではありませんがが、年に数回、艦艇広報として掃海艇などが訪れています。
沿岸監視隊の業務は情報収集、災害派遣、島内環境醸成の3点です。
情報収集は、与那国島周辺を航行する船舶が発信した通信・電子信号(船舶間の無線通信等、航行装置の発信信号)、航空機発進した通信・電子信号(航空機間・管制局との無線通信等、航法装置の発信信号)などのうち、駐屯地まで飛来した通信・電子信号の収集、沿岸レーダーおよび目視による監視活動を行なっています。
災害派遣はすでに水難事故に伴う災害派遣が実施されています(詳細は次回)。
島内環境醸成というのは、要は部隊と島内の住民の良好な関係の構築を指します。昨年は第1回駐屯地夏祭りを開催、駐屯地を一般開放したところ、人員589名、車両207両が来訪。島民の方々および隊員家族との一体感の醸成に一役買いました。
駐屯地内の施設を見てみると、訓練場、生活隊舎、燃料スタンド、食堂、庁舎はすでに完成していますが、倉庫は今年4月、体育館は6月に完成予定で、2016年11月の時点では建設中でした。駐屯地内の道路もまだすべて整備されておらず、砕石敷きのみの状態のところもあります。
庁舎屋上から駐屯地正門の方向を見ると、その先にプレハブの施設が見えます。これは仮の官舎で、本来ならば幹部自衛官や事務官は駐屯地の外に居住しなければいけないのですが、与那国町の住宅事情がよくないため、官舎ができるまでこのプレハブに仮住まいしているのです。
戦闘部隊ではないので、軽装甲機動車は警衛所の隣に見える2両のみ。
庁舎の屋上には太陽光パネルを置くための台が設置されていますが、予算不足で肝心のパネルはまだ買えていないそう。けれど台風のすさまじい威力を考えると、設置すると危険かもという声も上がっているとか。
駐屯地から5kmほど離れた島の中央付近に位置するインビ岳にある5基の監視レーダーから収集した情報は、最終的にこちらに集約しています。本来、レーダーは島のいちばん高い山の頂上に設置するのが望ましいのですが、そこには山の神様がいるということで設置が認められなかったそうです。でもそこにNHKのアンテナはありました……
(以下次号)
(わたなべ・ようこ)
(平成29年(西暦2017年)3月23日配信)