公文書管理新法を本棚整理法に終わらせるな! ~行政は自らに「仕様」を謳えるか~

 新たな文書管理法制の在り方を含む、国の機関における文書の作成から国立
公文書館への移管、廃棄までを視野に入れた文書管理の今後の在り方及び国立
公文書館制度の拡充等について検討を行うため、内閣において、公文書管理の
在り方等に関する有識者会議が開催されている。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/koubun/index.html
 公務員制度改革というと人事や天下りの事が話題に上るが、
公務員の業務効率が他の先進国や民間並みに向上するかどうかについては、
この公文書管理新法にかかっていると言って過言ではない。
 社保庁の年金記録逸失、厚労相の薬害ファイルの放置、毒入り餃子に観られ
る連絡不備など。
公務員は、勝手なファイル形式で情報を作成し、勝手な場所にそれを置き、
違った方法で交換している。
特にその混乱は、情報の電子化が加速した’96年以降顕著となり、
電子化情報誕生以前よりも業務効率が劣化している様子が散見される。
 実はこの様な状態は民間でも起こった。
情報を紙ベースで作成するのか、デジタルで作成するのか、
デジタルで作成するならどの様な形式か、
交換手段は、メールかFAXか郵送か。
 移行期の混乱は数年あったが、電子一元化で民間は世界に互して行ける体制
を整えた。
バブル崩壊後の失われた10年と電子化移行期が重なったため、観察し難い事
であったが、日本経済の復活は、電子化の克服に大きく関係している。
国地方あわせて公務員業務は、この電子化の克服が行えていない。
 そこで考えて欲しい。
行政は行政同士で、民間は民間同士でだけ情報交換を行っているわけではない。
行政と民間の情報交換は、どうなっているのだろうか。
 ここにある事例がある。
国交省は、公共事業受注者に電子納品と称して、
関連情報を電子成果品として納品(提出)する事を求めているのだ。
参考:電子納品の主旨
http://www.cals-ed.jp/index_gaiyou.htm
 その内容は、フォルダ構成(情報の置場)、ファイル形式(情報の作成形式)、
さらにはウイルス対策等、極めて詳細だ。
参考:工事完成図書の電子納品要領(案)

クリックしてconst2_2.pdfにアクセス

 以上の様な事が発注段階で、受注者が守るべき「仕様書」に謳われているのだ。
 余談だが、米国とデジタルベースで情報交換を最も問題無く行えるのは、
全省的にXML対応を終えた国交省だそうである。
(デジタル社会推進シンポジウム2007)
 例えば、所謂ゼネコンでもこの「仕様」への対応が迫られた訳だが、それは
容易な事ではなかった。
全社的に、あるいは各部署で、そして多くの場合個々人が、解説書片手に知識
と技術の吸収に勤めた。
勿論付いて行けない者も現れる。熟年管理職者が入社した時代には、パソコン
どころか電卓もなく、計算尺の時代だったのだ。彼らの多くが職場を去った。
この時代がバブル崩壊後と重なったのだ。
 この「仕様」を行政が民間に「謳う」(強いる)だけではなく、
自らにも「謳う」時代が否応なしにやって来たと、
行政側は、全公務員は、覚悟すべきではなかろうか。
これを行えた政府が、各調査でも先進電子化政府としての評価を得ているので
ある。
 そして、この「仕様を謳う」絶好のチャンスであり最後のチャンスが、
今回検討され始めた公文書管理新法ではなかろうか。
(高橋 光男)
「卵を割らなければオムレツは作れない」